第83章 ホグワーツ特急に乗って
『ロン、それは?』
「あぁ。ドレス・ローブだよ。リストに書いてあっただろ?古着屋で買ったから、こんなんだぜ。嫌になるよな。僕の持ってるものって、どれもこれもボロばっかりだ」
それは、栗色のビロードの長いドレスのようで襟のところにカビが生えたようなレースのフリルが付いていて、袖口にもそれに合ったレースが付いていた。なんて返したらいいかわからず、私は曖昧に笑う。
「それにしても、何があるんだろうね?」
私が困っているのに気づいたのか、ハリーがそう言った。
「バグマンが、ホグワーツで何が起こるのか話したがってた。ワールドカップのときのことだけど、覚えてる?でも、母親でさえ言わないことって、いったいなんだと...」
ロンはハリーの隣りに腰掛け、不満そうに話し出す。
「シッ!」
ハーマイオニーが突然唇に指をあて、隣りのコンパートメントを指差した。耳を済ますと、聞き覚えのある気取った声が開け放したドアを通して聴こえてくる。
「...父上は本当は僕をホグワーツでなく、ダームストラングに入学させようとお考えだったんだ。父上は、あそこの校長をご存知だからね。ほら、父上がダンブルドアをどう評価しているか、知ってるね...あいつは、穢れた血贔屓だ...ダームストラングじゃ、そんなくだらない連中は入学させない。でも、母上は僕をそんなに遠くの学校にやることがお嫌だったんだ。父上がおっしゃるには、ダームストラングじゃ闇の魔術に関して、ホグワーツよりずっと気の利いたやり方をしている。生徒が実際それを習得するんだ。僕たちがやってるようなくだらない防衛術じゃない...」
私は眉をひそめた。そんななか、ハーマイオニーが立ち上がってコンパートメントのドアのほうに忍び足で近づき、ドアを閉めてドラコの声が聞こえないようにした。
「それじゃあいつ、ダームストラングが自分に合ってただろうって思ってるわけね?ほんとにそっちに行ってくれてたら良かったのに。そしたら、もうあいつのこと我慢しなくて済むのに」
怒ったように言ったハーマイオニー。
「ダームストラングって、やっぱり魔法学校なの?」
「そう。しかも、ひどく評判が悪いの。'ヨーロッパにおける魔法教育の一考察'によると、あそこは闇の魔術に相当力を入れてるんだって」
ハリーの問いに、ハーマイオニーがフンという言い方で答えた。