第82章 闇の印
クラウチ氏は、ウィンキーにこれは服を与えることに値すると告げた。ウィンキーがさめざめと泣きながら許しを請う姿は哀れだった。
そんなウィンキーをハーマイオニーが庇うが、私の命令に従わないしもべはいらないとクラウチ氏は切り捨てる。ウィンキーの激しい泣き声が、あたり一面に響き渡った。とても居心地の悪い沈黙が流れる。
「さて、差し支えなければ、私はみんなを連れてテントに戻るとしよう。エイモス、その杖は語るべきことを語り尽した...よかったら、ハリーに返してもらえまいか...」
やがてアーサーさんが静かな口調で沈黙を破った。セドリックのお父さまは、ハリーに杖を返す。
「さあ、4人とも、おいで」
アーサーさんが静かに言う。ウィンキーを見つめてその場を動きたくない様子のハーマイオニーだったが、アーサーさんに急かされ動いた。
「ウィンキーは、どうなるの?」
「わからない」
空地を出るなりハーマイオニーが言い、それにアーサーさんが答える。
「みんなのひどい扱い方ったら!ディゴリーさんは、はじめっからあの子をしもべって呼び捨てにするし...それに、クラウチさんたら!犯人はウィンキーじゃないってわかってるのに、それでも追い出すなんて!ウィンキーがどんなに怖がっていたかなんて、どんなに気が動転してたかなんて、クラウチさんはどうでもいいんだわ...まるで、ウィンキーが人間じゃないみたいに!」
「そりゃ、人間じゃないだろ」
憤然として言ったハーマイオニーに、ロンがそういう。
「だからと言って、ロン、ウィンキーがなんの感情も持ってないことにはならないでしょ。あのやり方には、ムカムカするわ...」
「ハーマイオニー、私もそう思うよ。でも、いまはしもべ妖精の権利を論じているときじゃない。なるべく早くテントに戻りたいんだ。他のみんなはどうしたんだろう?」
アーサーさんがハーマイオニーに早くおいでと合図しながら、急いで言った。
「暗がりで見失っちゃったんだ。どうしてみんな、あんな髑髏なんかで神経を尖らせてるの?」
「テントに戻ってから全部話してやろう」
緊張している様子のアーサーさん。しかし、森のはずれまで辿り着いたとき、足止めを喰ってしまった。脅えた顔の魔女や魔法使いたちが大勢そこに集まっていたのだ。アーサーさんの姿を見つけると、ワッと一度に近寄って来た。