第82章 闇の印
「エイモス。考えてもみたまえ...あの呪文が使える魔法使いはわずかひと握りだ...ウィンキーが、いったいどこでそれを習ったというのかね?」
そのとき、アーサーさんがそう言った。
「おそらく、エイモスが言いたいのは。私が、召使いたちに常日頃から闇の印の造り出し方を教えていたとでも?」
クラウチ氏が一言一言に冷たい怒りを込めて言う。とても気まずい沈黙が流れる。セドリックのお父さまは、ショックを受けたようだ。
「Mr.クラウチ、そ...そんなつもりはまったく...」
「君は、この空地の全員の中でも、最もあの印を造り出しそうにない二人に嫌疑をかけようとしている!ハリー・ポッター...それに、この私だ...この子の身の上は、君も承知なのだろうな、エイモス?」
噛みつくように言ったクラウチ氏。
「もちろんだとも...みんなが知っている...」
「その上、闇の魔術もそれを行う者も、私がどんなに侮蔑し嫌悪してきたか、私の残してきた長い職歴の中で、君はまさか忘れたわけではあるまい?」
とてもうろたえて口ごもったセドリックのお父さまに、クラウチ氏は再び目を剥いて叫んだ。
「Mr.クラウチ、わ...私は、あなたがこの件に関わりがあるなどとは一言も言ってはいない!」
そう言ったセドリックのお父さまは、茶色の髪の毛に隠れた顔を赤らめ、また口ごもった。それから、アーサーさんが優しくウィンキーにハリーの杖を見つけたのかと問いかける。
それにウィンキーは木立ちの中で見つけたと答えた。そのため、アーサーさんは闇の印を造り出した犯人は、ハリーの杖を残して姿くらましをして、ウィンキーはたまたま杖を見つけてしまったのだろうと言った。
「しかし、それなら、ウィンキーは真犯人のすぐ近くにいたはずだ!しもべ、どうだ?誰か見たかね?」
セドリックのお父さまは急き込むように言う。ウィンキーは一層激しく震えだした。大きな目玉が、セドリックのお父さまからバグマンへ、そしてクラウチ氏へと走る。それから唾をゴクンと呑んだ。
「わたしは、誰も見てはおりません...だれも...」
クラウチ氏はセドリックのお父さまにこの件は私に任せてほしいと言い、その提案が気に入らない様子だったがクラウチ氏が魔法省の実力者なので、断るわけにはいかないといった様子で頷いたセドリックのお父さま。