第82章 闇の印
大きな茶色の目が開き、寝呆けたように二、三度瞬きして、魔法使いたちが黙って見つめる中、ウィンキーはヨロヨロと身体を起こした。セドリックのお父さまの足に目を止め、ウィンキーはゆっくりおずおずと目を上げ、セドリックのお父さまの顔を見つめる。
それから、さらにゆっくりと空を見上げた。おそらく、闇の印を見ただろうウィンキーはハッと息を呑み、狂ったようにあたりを見回す。空地に詰めかけた大勢の魔法使いを見て、ウィンキーは怯えたように突然啜り泣きはじめた。
「しもべ!私が誰だか知っているか?魔法省の魔法生物規制管理部の者だ!」
セドリックのお父様が厳しい口調で言う。ウィンキーは座ったまま、身体を前後に揺すりはじめ、激しい息遣いになった。
「見てのとおり、しもべよ、いましがた闇の印が打ち上げられた。そしておまえは、その直後に印の真下で発見されたのだ!申し開きがあるか!」
「あ...あ...あたしは、やっていませんです!わたしは、やり方を知らないのでございます!」
ウィンキーは息を呑んで言った。
「おまえが見つかったとき、杖を手に持っていた!」
ウィンキーの目の前で杖を振り回しながら吼えるように言ったセドリックのお父さま。それを見たハリーが自分の杖だと声をあげた。
自白しているのかと疑うセドリックのお父さまだったが、アーサーさんにハリー・ポッターがそんなことをするのかと問われ、謝った。セドリックのお父さまはウィンキーを問い詰めるが、ウィンキーは否定する。その様子があまりにも可哀想で私は見ていられなかった。
「ウインキーじゃないわ!ウィンキーの声は甲高くて小さいけど、私たちが聞いた呪文は、ずっと太い声だったわ!」
私と同じ気持ちだったのかハーマイオニーがそう言った。それから、私とハリーとロンに同意を求めるように振り返る。
「ウィンキーの声とは、全然違ってたわよね?」
「違ってた。しもべ妖精の声とは、はっきり違ってた」
ハリーが頷く。
「うん、あれは人間の声だった」
『私もそう思います。ウィンキーの声とは違いました』
しかし、そんなことはどうでもいいと言うようなセドリックのお父さまにより、杖に直前呪文がかけられ、その杖からは蛇の舌をくねらせた巨大な髑髏が飛び出してきた。それを見て、セドリックのお父さまはウィンキーをさらに厳しく問い詰める。