第2章 始まり
「...ろ...きろ」
どこからか声が聞こえた気がしたが、どうにも目を開けるには眠気がひどく、その眠気に身を委ねようとした。
「起きろ...起きろ、優美」
しかし、自分の名前を呼ばれたことに気付きハッと目を開けた。ここはどこだろうと寝ていた身を起こし、辺りをきょろきょろと見回す。私は白い広い空間にいた。どこまで続くのかわからないほどのとても広いところだった。
『(私は病院にいてそこで死んだはず...。なぜここにいるんだろう)』
考えながらふと自分の横を見ると、なぜかそこには黒猫がいた。
『......え?』
困惑しながらじっとその黒猫を見つめる。
「起きたか」
『え?!』
なんと、その黒猫は言葉を発したのだ。若い男の人の声だ。私は驚きのあまりにその黒猫を凝視をしていると、その黒猫はくすっと笑って言った。
「そう見つめるでない」
声とは違い、年をとった人の言葉遣いだ。驚きが大きく言葉を発すことが出来なかったが、なんとか落ち着こうと深呼吸をして、その黒猫にたずねる。
『その...えっと黒猫...さん?はどうしてここに?』
首をかしげながらその黒猫を見つめると、その黒猫は顔に笑みを浮かべながら答えた。
「わたしはこの世界の神だ。優美、お前の願いを叶えるためにここにお前を呼んだのだ」