第79章 パフォーマンス
パーシーは、まるでハリネズミが置いてある椅子に座ろうとしているかのように、ひっきりなしに椅子から飛び上がっては、ピンと直立不動の姿勢を取っていた。魔法省大臣、コーネリウス・ファッジ閣下直々のお出ましにいたっては、パーシーはあまりに深々と頭を下げたので、メガネが落ちて割れてしまった。
大いに恐縮したパーシーは、杖でメガネを元通りにし、それからはずっと椅子に座ってることにしたみたいだ。それでも、ファッジがハリーに、昔からの友人のように親しげに挨拶するのを、羨ましげな目で見ていた。ファッジは、まるで父親のような様子でハリーと握手し、元気かと声を掛け、自分の両脇にいる魔法使いにハリーを紹介する。
「ご存知のハリー・ポッターですよ。ハリー・ポッターですぞ...ほら、ほら、ご存知でしょうが、誰だか...例のあの人から生き残った男の子ですよ...まさか、知ってるでしょうね...」
ファッジは、金の縁取りをした豪華な黒ビロードのローブを着たブルガリアの大臣に大声で話し掛けたが、大臣は言葉が一言もわからない様子。しかし、ブルガリアの大臣は突然ハリーの額の傷痕に気づき、それを指差しながら、何やら興奮して喚き出した。
「なかなか通じないものだ。私はどうも言葉は苦手だ。こういうことになると、バーティ・クラウチが必要だ。ああ、クラウチのしもべ妖精が席を取っているな...いや、なかなかやるものだわい。ブルガリアの連中がよってたかって、良い席を全部せしめようとしているし......ああ、ルシウスのご到着だ!」
うんざりした様子のファッジをみていた私は、その言葉に振り返った。後列のちょうどアーサーさんの真後ろが3席空いている。
そこに向かって席伝いに歩いて来るのは、ルシウスさんとドラコ、それに女性が一人...ドラコのお母さまであるナルシッサさんだ。ナルシッサさんは、ブロンドで、背が高くほっそりしている。今は、なんて嫌な臭いなんでしょうというような表情をしているが、美人である。
「ああ、ファッジ。お元気ですかな?妻のナルシッサとははじめてでしたな?息子のドラコもまだでしたか?」
ルシウスさんは、魔法省大臣のところまで来ると、手を差し出して挨拶した。
「これは、これは、お初にお目にかかります」
そう言ったファッジは、笑顔でナルシッサさんにお辞儀する。それから、紹介をしだした。