第79章 パフォーマンス
「でも、わたしもドビーを知っています!」
甲高い声で答えた。貴賓席の照明が特に明るいわけでもなかったのだが、眩しそうに顔を覆っている。
「わたしは、ウィンキーでございます。...あなたさまは...」
そう言うと、こげ茶色の目がハリーの傷痕を捉えたとたん、小皿くらいに大きく見開かれた。
「あなたさまは、紛れもなくハリー・ポッターさま!」
「うん、そうだよ」
「ドビーが、あなたさまのことをいつもお噂してます!」
ウィンキーは尊敬で打ち震えたかのように、ほんの少し両手を下にずらす。
「ドビーは、どうしてる?自由になって、元気にやってる?」
「ああ。ああ、それがでございます。決して失礼を申し上げるつもりはございませんが、あなたさまがドビーを自由になさったのは、ドビーのためになったのかどうか、わたしは自信を持つことができません」
ハリーの問いに、ウィンキーは首を振って答えた。
「どうして?ドビーに何かあったの?」
不意を突かれたようなハリー。
「ドビーは、自由で頭がおかしくなったのでございます。身分不相応の高望みでございます。勤め口が見つからないのでございます」
ウィンキーが悲しげに言う。
「どうしてなの?」
ウィンキーは、声を少し落として囁いた。
「仕事に、お手当てをいただこうとしているのでございます」
「お手当て?だって...なぜ、給料をもらっちゃいけないの?」
そう言ったハリーは、ポカンとしている。ウィンキーが、そんなことを考えること自体が恐ろしいという顔で、少し指を閉じたので、また顔半分が隠れてしまう。
「屋敷しもべは、お手当てなどいただかないのでございます!ダメ、ダメ、ダメ。わたしはドビーに言いました。ドビー、どこか良いご家庭を探して、落ち着きなさいって、そう言いました。ドビーはのぼせて、思い上がっているのでございます。屋敷しもべ妖精に相応しくないのでございます。ドビー、あなたがそんなふうに浮かれていたら、しまいには、ただのゴブリンみたいに、魔法生物規制管理部に引っ張られることになっても知らないからって、わたし、そう言ったのでございます」
押し殺したようなキーキー声で言ったウィンキー。
「でも、ドビーは、もう少しくらい楽しい思いをしてもいいんじゃないかな」
ウィンキーは顔を覆った手の下で、きっぱりと言う。