第78章 バクマンとクラウチ
しかし、ロンはブルガリアのシーカー、ビクトール・クラムのミニチュア人形も買った。ミニチュア人形のクラムは、ロンの手の中を往ったり来たりしながら、ロンの緑のロゼットを見上げて顔をしかめている。
「わあ、これ見てよ!」
ハリーが言う。ハリーは、真鍮製の双眼鏡のようなものがうず高く積まれているカートに駆け寄った。その双眼鏡には、あらゆる種類の怪しげなつまみやダイヤルが付いているようだ。
「万眼鏡だよ。アクション再生ができる...スローモーションで...必要なら、プレーを一コマずつ静止させることもできる。大安売り...1個10ガリオンだ」
魔法使いの販売員が熱心に売り込む。
「こんなの、さっき買わなきゃよかった」
ロンは踊るクローバーの帽子を指差してそう言うと、万眼鏡をいかにも物欲しげに見つめた。
「4個ください」
ハリーが販売員にはっきりと言う。
「いいよ、気を使うなよ」
赤くなったロン。ハリーが、両親からちょっとした財産を相続したことで、ロンよりずっと金持ちだということになると、ロンはいつも神経過敏になるのだ。
「クリスマスプレゼントはなしだよ。しかも、これから10年くらいはね」
ハリーは万眼鏡を私とロンとハーマイオニーの手に押し付けながら言った。
「いいとも」
ロンはにっこりする。
「うわああ、ハリー、ありがとう。それじゃ、私が4人分のプログラムを買うわ。ほら、あれ」
そのあと、みんなが目を輝かせたものを私がみんなに買った。財布がだいぶ軽くなったので、私達はテントに戻る。ビル、チャーリー、ジニーの3人も、みんな緑のロゼットを着けていた。アーサーさんは、アイルランド国旗を持っている。
フレッドとジョージは、全財産をはたいてバグマンに渡したので、何も無しだ。そのとき、どこか森の向こうから、ゴーンと深く響く音が聴こえ、同時に木々のあいだに赤と緑のランタンがいっせいに明々と灯り、競技場への道を照らし出した。
「いよいよだ!さあ、行こう!」
そう言ったアーサーさんも、みんなに負けず劣らず興奮していた。買い物で手に入れた品物を持って、アーサーさんを先頭にみんな急ぎ足で、ランタンに照らされた小道を森へと入って行く。周辺で動き廻る、何千人もの魔法使いたちのざわめきが聴こえた。叫んだり、笑ったりする声や歌声が切れぎれに聞こえて来たのだ。