第78章 バクマンとクラウチ
「ルード、さあ、ブルガリア側に会わないと。お茶をごちそうさま、ウェーザビー君」
飲んでもいないお茶をパーシーに押しつけるようにして返し、クラウチ氏はバグマンが立ち上がるのを待つ。バグマンは、お茶の残りをグイッと飲み干すと、ポケットの中の金貨の音を楽しむかのように、足を再び動かして立ち上がった。
「それじゃ、あとで!みんな、貴賓席で私と一緒になるよ...私が解説するんだ!」
バグマンは手を振り、クラウチ氏は軽く頭を下げ、二人とも姿くらましで姿を消す。
「父さん、ホグワーツで何があるの?あの二人、なんのことを話してたの?」
すかさず言ったフレッド。
「すぐにわかるよ」
「魔法省が、解禁するときまでは機密情報だ。クラウチさんが明かさなかったのは、正しいことなんだ」
アーサーさんが微笑み、パーシーが堅苦しく言った。
「おい、黙れよ、ウェーザビー」
フレッドがそう言う。タ方が近づいて来ると、興奮の高まりがキャンプ場を雲のように覆っているということを、はっきりと感じ取ることができた。夕暮れには、凪いだ夏の空気さえ、期待で打ち震えているかのようだ。
そして、試合を待つ何千人という魔法使いたちを、夜の暗闇がすっぽりと覆うと、わずかに残されていた慎みも吹き飛んでしまう。あからさまな魔法の形跡があちこちで上がっても、魔法省はもはやお手上げだとばかりに、手を下すのをやめてしまった。行商人がそこいら中に姿現しをする。彼らは、とても珍しい品物のみやげ物をトレーやカートに山と積んでいたのだ。
「ねぇ、見に行きましょう?」
『えぇ』
ハーマイオニーに誘われ、ハリーとロンも一緒に見に行く。明るく光るロゼット...アイルランドは緑で、ブルガリアは赤。これがキーキー声で選手の名前を叫ぶのだ。踊る三つ葉のクローバーがビッシリ飾られた緑のとんがり帽子。
本当に吼えるライオン柄のブルガリアのスカーフ。打ち振ると国歌を演奏する両国の国旗。本当に飛ぶファイアボルトのミニチュア模型。コレクター用の有名選手の人形は、手に乗せると自慢げに手のひらの上を歩き廻るのだった。
「夏休み中ずっとこのためにお小遣い貯めてたんだ」
私、ハリー、ハーマイオニーと一緒に物売りのあいだを歩いているロンが、みやげ物を買いながらそう言った。踊るクローバー帽子と大きな緑のロゼットを買ったロン。