第78章 バクマンとクラウチ
アーサーさんはひっきりなしに解説したが、子供たちは魔法省のことをかなり知っていて、関心がないようなので、主にハリーとハーマイオニーのために解説していた。私も知っているが、一応聞いておく。
「いまのは、カスバート・モックリッジ。'ゴブリン(小鬼)連絡室'の室長だ...いまやって来るのが、ギルバート・ウィンプル。'実験呪文委員会'のメンバーだ。あの角が生えてからもうずいぶん経つな...やあ、アーニー...アーノルド・ピーズグッドだ。'忘却術士'...ほら、魔法事故修復部隊の隊員だ...そして、あれがボードとクローカー...無言者だ...」
「え?なんですか?」
「神秘部に属していて、極秘事項だ。いったい、あの部門は何をやっているのやら...」
やっと火の準備が整う。卵とソーセージを料理しはじめるとすぐに、ビル、チャーリー、パーシーが、森のほうからゆっくりと歩いてやって来た。
「父さん、姿現ししました」
パーシーが大声で言う。
「ああ、ちょうどよかった。昼食だ!」
卵とソーセージの皿が半分ほど空になったとき、アーサーさんが急に立ち上がって、大股で近づいて来る魔法使いにニコニコと手を振った。
「これは、これは!今回の、時の人!ルード!」
ルード・バグマンは、私がこれまでに出会った人の中でも、あの花模様ナイトガウンのアーチーおじいさんも含めての中で、一番目立っていた。鮮やかな黄色と黒の太い横縞が入ったクィディッチ用の長い競技用ローを着ている。胸のところに、巨大なスズメバチが一匹描かれていた。
たくましい体格の男が、少し弛んだという感じだ。イングランド代表チームでプレーしていた頃にはなかっただろうと思われる大きな腹のあたりで、ローブがパンパンになっている。鼻はつぶれていた。しかし、丸くてブルーの瞳の眼、短いブロンドの髪の毛、ばら色の顔が、育ち過ぎた少年のような感じを与えている。
「よう、よう!」
バグマンが嬉しそうに呼び掛けた。まるで、踵にバネが付いているかのように弾んで、完全に興奮しまくっている。
「わが友、アーサー。どうだい、この天気は。え?どうだい!こんな完全な日和はまたとないだろう?今夜は、雲ひとつ無いぞ...それに、準備は万全...私の出る幕はほとんどないな!」
そう言ったバグマンは、フーッフーッと息を切らしながら、焚き火に近付いた。