第77章 移動キーと水汲み
アーサーさんが中から呼び掛けた。ハリーが入っていくのを見て、私とハーマイオニーとジニーは女の子用だというテントを見てみることにする。中に入ったハーマイオニーが口を開けてポカンとしたのに、ジニーとくすくす笑っていると呼び掛ける声がした。
「おーい」
私が外に出ると、そこにはロンとハリーがいた。
『どうしたの?』
「おじさんが水を汲んできてくれって。僕とロンとハーマイオニーとユウミの4人で。キャンプ場の向こう端だよ」
「私は?」
様子をみに来たジニーが首を傾げる。
「ジニーは、薪を集めるんじゃないか?」
ロンの言葉にジニーは頷いて、アーサーさんの方にいった。霧も晴れ、昇ったばかりの朝日で、あたり一面に広がったテント村を見渡すことができた。私達は、周囲を見ることが面白くて、ゆっくりと進んだ。
小さな男の子が、杖で突っついてナメクジをサラミソーセージくらいの大きさにしてその巨大ナメクジを母親が踏んでしまった。もう少し歩くと、爪先が露を含んだ草々をかすめる程度にまでしか上がらないおもちゃの箒で飛んでいる二人の小さな魔女の姿が見える。
「こんな明かるい中で!親は朝寝を決め込んでいるんだ。きっと...」
魔法省の役人が一人、さっそくそれを見つけて、私達の脇を急いで通り過ぎながら、困惑しきった口調で呟いた。あちこちのテントから、大人の魔法使いや魔女が顔を覗かせ、朝食の支度に取り掛かっている。
なにやらコソコソしていると思うと、杖で火を起こしていたり、マッチを擦りながら、こんなもので絶対に火が付くものかと疑い深げな顔をしている者もいた。
「あれっ...僕の目がおかしいのかな。それとも何もかも緑になっちゃったのかな?」
ロンがそう言ったが、ロンの目がおかしくなったわけではない。私達は、三つ葉のクローバーでびっしりと覆われたテントの群れに足を踏み入れていた。
まるで、変わった形の小山が地上に生え出したかのようだ。テントの入口が開いているところからは、ニコニコしているそれぞれの顔が見えた。そのとき、背後から誰かが私達を呼んだ。
「ハリー!ロン!ハーマイオニー!ユウミ!」
同じグリフィンドール生の4年生、シェーマス・フィネガンだ。三つ葉のクローバーで覆われたテントの前に座っていた。傍に居る黄土色の髪をした女性はきっと母親だろう。