第77章 移動キーと水汲み
傍に居る黄土色の髪それに、シェーマスの親友の、同じくグリフィンドール生のディーン・トーマスも一緒だ。私達は、テントに近づいて挨拶する。
「この飾りつけ、どうだい?魔法省は、気に入らないみたいなんだ」
シェーマスはニッコリした。
「あら、国の紋章を出して何が悪いっていうの?ブルガリアなんか、あちらのテントに何をぶら下げているか見てごらんなさい。あなたたちは、もちろん、アイルランドを応援するんでしょう?」
フィネガン夫人が口を挟んだ。私達を見る夫人の目は、光っている。フィネガン夫人に、ちゃんとアイルランドを応援するからと約束して、私達はまた歩きはじめた。
「あの連中に取り囲まれてちゃ、ほかになんとも言えないよな?」
もっともロンはそう言った。
「ブルガリア側のテントには、何がいっぱいぶら下がってるのかしら」
『あそこにテントがあるわ』
私は大きなキャンプ群を指差して言う。そこには、赤、緑、白のブルガリア国旗が微風の中で翻っていた。
「見に行こう」
ハリーの言葉に見に行くと、それらのテントには、植物こそ飾り付けられてはいなかったが、どのテントにもまったく同じポスターがベタベタ貼られていた。真っ黒で濃い眉毛の、無愛想な顔のポスターだ。もちろん顔は動いていたが、ただ瞬きして顔をしかめるだけだった。見知った顔の私は、くすりとする。
「クラムだ」
ロンがそっと言った。
「なあに?」
「クラムだよ!ビクトール・クラム。ブルガリアのシーカーの!」
ハーマイオニーの問いに、ロンが答える。
「とっても気難しそう」
私達に向かって瞬きしたり睨んだりしている大人数となっているクラムの顔を見回しながら言ったハーマイオニー。
「とっても気難しそうだって?顔なんて誰が気にする?信じられないくらいなんだから。それに、まだほんとに若いんだ。18かそこらだよ。天才なんだから。まあ、今晩、見たらわかるよ」
ロンは、目を上に向けて天を仰いだ。キャンプ場の隅に位置する水道には、もう、何人かが並んでいた。私達も列に加わる。
そのすぐ前で、男の人が2人、激しく言い争っていた。一人は年寄りの魔法使いで、花模様の長いナイトガウンを着ている。もう一人は、間違いなく魔法省の役人だ...細縞のズボンを差し出し、困り果てて泣きそうな声をあげている。