第77章 移動キーと水汲み
「スポーツ部の部長としちゃ、こんなに熱心な部長はいないがね。なにしろ、彼自身がクィディッチのイングランド代表選手だったんだ。それに、プロチームのウイムボーン・ワスプスじゃ最高のビーターだったんだ」
霧の立ちこめるキャンプ場を、一行は長いテントの列を縫って歩き続けた。ほとんどのテントはごく当たり前に見える。テントの持ち主が、なるべくマグルらしく見せようと努力していることは確かだ。しかし、煙突をつけてみたり、ベルを鳴らす引き紐や風見鶏を付けたことが逆効果になっていた。
しかも、あちこちにどう見ても魔法仕掛けと思えるテントがあり、これではロバーツさんが疑うのも無理はないだろう。キャンプ場の真ん中あたりにいくと、縞模様のシルクで出来た、まるで小さな宮殿のような豪華なテントがあった。さらに入口には生きた孔雀が数羽繋がれている。もう少し行くと、3階建てに尖塔が数本立っているテントもあった。
「毎度のことだ。大勢集まると、どうしても見栄を張りたくなるらしい。ああ、ここだ、ご覧、この場所が私たちの場所だ」
アーサーさんが微笑む。
到着した場所は、キャンプ場の一番奥で森に近い場所だ。その空き地に小さな立て札が打ち込まれ、'ウーイズリ'と書かれていた。
「最高の場所だ!競技場はちょうどこの森の反対側だから、こんなに近いところはないよ」
アーサーさんは嬉しそうに言って、肩にかけていたリュックを降ろす。
「よし。魔法は、厳密に言うと、許されない。これだけの数の魔法使いがマグルの土地に集まっているのだからね。テントは手作りでいくぞ!そんなに難しくはないだろう...マグルがいつもやっていることだし...さあ、ハリー、どこからはじめればいいのかね?」
興奮気味のアーサーさん。ハリーとハーマイオニーの2人が考え、柱や杭がどこに打たれるべきかを説明する。アーサーさんは、木槌を使う段になると、完全に興奮状態だったので、役に立つどころか足手まといになった。
それでもなんとかみんなで、2人用の粗末なテントを2張り立ち上げた。みんなはちょっと下がって自分たちの手作り作品を眺め、大満足している様子。心配そうな顔のハリーとハーマイオニーを見て、私は声をかける。
『二人とも、心配しなくて大丈夫よ』
「ちょっと窮屈かもしれないよ。でも、みんな何とか入れるだろう。入って、中を見てごらん」