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愛される少女【HP】

第77章 移動キーと水汲み


『セドリックには、仲良くしてもらってます』

私はセドリックの反応に内心首を傾げるが、そう言って微笑んだ。セドリックは私のことをなんて言っていたのだろうか。

「そろそろ時間だ。エイモス、ほかに誰か来るかどうか、知ってるかね?」

アーサーさんが懐中時計を引っ張り出しながら、呟いた。

「いいや、ラブグッド家はもう一週間前から行ってるし、フォーセット家はチケットが手に入らなかった。この地域には、ほかには誰も居ないと思うが、どうかね?」

セドリックのお父さまが答える。

「私も思いつかない。さあ、あと一分だ...準備しないと。移動キーに触っていればいい。それだけだよ。指一本でいいから...」

後半は、ハリーとハーマイオニーに向けて言ったアーサーさん。セドリックのお父さまの掲げた古ブーツの周囲に10人が詰め合う。冷たい風が丘の上を吹き抜ける中、全員が輪になって立った。誰も何も言わない。

「3秒...2......1」

アーサーさんが片方の目で懐中時計を見たまま呟いた。突然のことだった。私は、急に臍の裏側がグイッと前方に引っ張られるような感じがした。両足が地面を離れる。風の唸りと色の渦の中を、全員が前へ前へとスピードを上げて行く。

私の人差し指はブーツに張り付き、まるで磁石で私を引っ張り、前進させているかのようだ。確か、地面に投げ出されるのではないかと思い目を瞑った瞬間、私を支えるように腰に手が回った。地面に足がついたとわかった私は、目を開ける。

『セドリック。ありがとう』

「いいえ。大丈夫かい?」

『大丈夫よ』

私の腰に手をまわして支えてくれたのは、セドリックだった。セドリックとセドリックに支えてもらった私と、セドリックのお父さま、アーサーさんの4人以外はみんな地面に転がっていた。少し、申し訳ない気持ちになる。

「5時7分。ストーツヘッド・ヒルから到着」

どうやら、霧深い辺鄙な荒地のようなところに到着したようだ。目の前に、疲れて不機嫌な顔の魔法使いが二人立っていた。一人は大きな金時計を持ち、もう一人は太い羊皮紙の巻紙と羽根ペンを持っている。

魔法省の人みたいだ。その人達に言われた通りに、20分も歩くと、小さな石造りの小屋が見えて来た。その脇に門がある。その向こうに、ゴーストのように白く、ぼんやりと立ち並んでいる何百というテントが見えた。

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