第76章 準備
それから、テーブルの反対の端のほうに目をやり、ハリー、ロン、ハーマイオニーを見た。
「お父さんは知っていますね、僕が言ってること。あの、極秘のこと」
ロンは、またかという顔でハリーとハーマイオニーと私に囁く。
「パーシーのやつ、仕事に就いてからずっと、なんの行事かって僕たちに質問させたくて、この調子なんだ。厚底鍋の展覧会かなんかだろ」
テーブルの真ん中では、モリーさんがビルの牙のようなイヤリングのことで言い合っていた。最近つけたばかりのようだ。
そして、モリーさんの隣りでは、フレッド、ジョージ、チャーリーが、ワールドカップの話で盛り上がっていた。大いに楽しんでみんなが食べ終わった頃。ロンがテーブルを見渡し、みんなが話に気を取られているのを確かめてから、低い声でハリーに言った。
「それで...シリウスから、近ごろ便りはあったのかい?」
ハーマイオニーと私は、振り向いて聞き耳を立てる。
「うん。2回あった。元気みたいだよ。僕、一昨日手紙を書いた。ここにいるあいだに返事が来るかもしれない」
こっそり答えたハリー。
「もう、こんな時間。みんなもう寝なくちゃ。全員よ。ワールドカップに行くのに、夜明け前に起きるんですからね。ハリー、学用品のリストを置いて行ってね。明日、ダイアゴン横丁で買ってきてあげますよ。みんなの買い物もするついでがあるし。ワールドカップのあとは時間が無いかもしれないわ。前回の試合なんか、5日間も続いたんだから」
モリーさんが腕時計を見ながら急に言った。
「ワォ...今度もそうなるといいな!」
そう言ったハリーは、熱くなっている。
「あー、僕は逆だ。5日間もオフィスを空けたら、未処理の書類の山がどんなになっているかと思うとゾッとするね」
顔をしかめながら言ったパーシー。
「そうとも。また誰かがドラゴンの糞を忍び込ませるかもしれないし、な、パース?」
フレッドがそう言うと、パーシーが顔を真っ赤にして言った。
「あれは、ノルウェーからの肥料のサンプルだった!僕への、個人的なものじゃなかったんだ!」
「個人的だったさ。俺達が送ったんだから」
フレッドが、テーブルを離れながらハリーに囁いたのが聞こえた私はくすっと笑う。それを見たフレッドは、パチっとウィンクした。