第76章 準備
上のほうからカタカタと音がしたので、みんなが見上げると、パーシーの顔が3階の窓から突き出していた。
「静かにしてくれないか?」
パーシーが怒鳴った。
「ごめんよ、パース。鍋底はどうなったかい?」
そう言ったビルが、ニヤッとする。
「最悪だよ」
パーシーは気難しい顔でそう言うと、窓をバタンと閉めた。ビルとチャーリーはクスクス笑いながら、テーブルを二つ並べて安全に芝生に降ろし、ビルが杖を一振りして、欠けた脚を元に戻し、どこからともなくテーブルクロスを取り出した。私は、すぐに駆け寄る。
『ビル!チャーリー!』
「ユウミ、久しぶりだね」
「やぁ、ユウミ」
ビルとチャーリーは、抱きついた私を優しく受け止めて微笑んでくれた。ビルとチャーリーには、妹のように可愛がってもらっていて私も兄のように慕っている。そのため、久しぶりに会えてすごく嬉しかった。ビルとチャーリーと話していた私は、後ろから抱きつかれたため振り向く。
『フレッド?ジョージ?』
「そうだぜ、ユウミ!」
「ビルとチャーリーばっかりじゃなくて!」
「「俺たちとも話そうぜ!」」
私はにっこりしてフレッドとジョージと向き合う。
『えぇ、もちろんよ』
フレッドとジョージとそのまま、話していた。七時になると、二卓のテーブルはモリーさんが腕を振るったご馳走がいく皿もいく皿も並べられ、重みで唸っていた。紺碧に澄み渡った空の下で、ウィーズリー家の9人と、私、ハリー、ハーマイオニーとが食卓についた。
テーブルの端では、魔法省の国際魔法協力部に就職したパーシーとアーサーさんが仕事の話をしている。その中に出てきたバーサ・ジョーキンズ。この人はもう1ヶ月も行方不明なのだ。しかし、私は彼女がどうなっているか知っているため表情を暗くさせた。
「どうしたんだい、ユウミ?」
それに気づいたビルが心配そうにこちらを見たため、私は笑みを浮かべる。
『なんでもないわ、ビル』
パーシーは大げさな溜め息をつき、ニワトコの花のワインをグイッと飲んでこう言った。
「僕たちの国際魔法協力部はもう手いっぱいで、ほかの部の捜索どころではないんですよ。ご存知のように、ワールドカップのすぐあとに、もう一つ大きな行事を組織するのでね」
パーシーはもったいぶって咳払いをする。