第73章 辞職
「君の推測通りだ...だから、私たちはプロングズ(尖ったツノ)と呼んでいたんだよ」
ルーピン先生は、最後の数冊の本をカバンに放り込み、引き出しを閉め、ハリーのほうに向き直った。
「さあ...昨夜叫びの屋敷からこれを持って来た」
ルーピン先生はそう言うと、ハリーに透明マントを返した。それから、ちょっとためらってから、ルーピン先生は忍びの地図も差し出す。
「私はもう、君の先生ではない。だから、これを君に返しても別に後ろめたい気持ちはない。私には何の役にも立たないものだ。それに、君とロン、ユウミとハーマイオニーなら、使い道を見つけることだろう」
ハリーは、地図を受け取ってニッコリした。
「ムーニー、ワームテール、パッドフット、プロングズが、僕を学校から誘い出したいと思うだろうって、先生、そうおっしゃいました...面白がってそうするだろうって」
「ああ、その通りだったろうね。ジェームズだったら、自分の息子が、この城を抜け出す秘密の通路を一つも知らずに過ごしたなんてことになったら、大いに失望しただろう。これは間違いなく言える」
ルーピン先生は、もうカバンを閉めようとしている。
『ルーピン先生、先生は私の中で一番の闇の魔法に対する防衛術の先生です。今までもこれからもです』
ルーピン先生は私の言葉に驚きの表情を見せてから、嬉しそうに微笑んだ。そのとき、ドアをノックする音がした。アルバスだ。私とハリーを見ても驚いた様子は見せなかった。
「リーマス、門のところに馬車が来ておる」
「校長、有り難うございます」
ルーピン先生は、古ぼけたカバンと空っぽになったグリンディローの水槽を取り上げる。
「それじゃ...さよなら、ハリー、ユウミ。君たちの先生になれて嬉しかったよ。またいつかきっと会える。校長、門までお見送りいただかなくて結構です。一人で大丈夫です」
微笑んだルーピン先生。
「それでは、さらばじゃ、リーマス」
アルバスが重々しく言った。ルーピン先生は、グリンディローの水槽を少し脇によけてアルバスと握手できるようにした。
最後にもう一度ハリーと私に向かって頷き、チラリと笑顔を見せて、ルーピン先生は部屋を出て行く。ハリーは、主の居なくなった椅子に座り、ふさぎ込んで床を見つめている。私は、そわそわと落ち着かない気持ちでいた。