第73章 辞職
「ハリー、君がやって来るのが見えたよ」
そう言ったルーピン先生は微笑んだ。今まで熱心に見ていた羊皮紙を指差したルーピン先生。忍の地図だ。
「今、ハグリッドに会いました。先生がお辞めになったって言ってました。嘘でしょう?」
「いや、本当だ」
ルーピン先生は机の引き出しを開け、中身を取り出しはじめる。
「どうしてなんですか?魔法省は、まさか先生がシリウスの手引きをしたなんて思っているわけじゃありませんよね?」
ルーピン先生は、ドアのところまで行って、ハリーの背後でドアを閉めた。
「いいや。私が君たちの命を救おうとしていたのだと、ダンブルドア校長がファッジ大臣を納得させてくださった」
そこで溜め息をついたルーピン先生。
「セブルスは、そのことが我慢できなかった。マーリン勲章をもらい損ねたことでとても失望したのだろう。そこで、セブルスは...その...ついうっかり、今日の朝食の席で、私が狼人間だと漏らしてしまった」
「たったそれだけで、お辞めになるなんて!」
ルーピン先生は、皮肉っぽく笑った。
「明日の今頃には、親たちからのふくろう便が届きはじめるだろう...ハリー、誰も自分の子供が、狼人間に教えを受けることなんて望まないんだよ。それに、昨夜のことがあって、私も、その通りだと思ったんだ。誰か君たちを噛んでいたかもしれないんだ...こんなことは、二度と起こってはならない」
「先生は、今までで最高の、闇の魔法に対する防衛術の先生です!行かないでください!」
ルーピン先生は首を振り、何も言わない。そして、引き出しの中を片付け続ける。ハリーが何かを考えていると、ルーピン先生が話し出しました。
「校長先生が今朝、私に話してくれた。ハリー、君は昨夜、ずいぶん多くの命を救ったそうだね。ユウミ、君もだ。私に誇れることがあるとすれば、それは、君達がそれほど多くを学んでくれたということだ。ハリー、君のパトローナスのことを話しておくれ」
「どうして、パトローナスのことをご存じなんですか?」
ハリーは、気持ちを逸らされたみたいだ。
「それ以外、ディメンターを追い払えるものがあるかい?」
何が起こったのか、ハリーはルーピン先生に話した。話し終えたとき、ルーピン先生はまた微笑んだ。
「そうだ。君のお父さんは、いつも牡鹿に変身していた」