第72章 逆転時計
「僕、割り込むつもりはないよ。でも、何が起こっているのか見えないと、シリウスをいつ救い出したら良いのかわからないだろ?」
ハリーは急いで言った。
「ええ...それなら、いいわ...私、ここでバックビークと待ってる...でも、ハリー、気を付けて...狼人間がいるし...ディメンターも...ユウミはどうする?」
『私もここにいるわ。ハリー、気をつけて』
ハリーは、外に出ていった。私はすぐにハーマイオニーに向き直る。
『ハーマイオニー。私、先に医務室のドアの前に戻っているわ』
「どうして?」
『シリウスを助けるのに、時間がギリギリしかなかったわよね?私、もうあなた達の足を引っ張りたくないわ』
ハーマイオニーはすぐに否定してくれる。
「まさか!足を引っ張ってなんかないわ!」
『ありがとう』
「えぇ。でも、その方がいいかもしれないわね。時間がないもの。私、あなたを走らせるなんて出来ないわ」
私はハーマイオニーに近づき、手を握った。
『ハーマイオニーとハリーなら、絶対に出来るわ』
「えぇ、やってみせるわ!」
ハーマイオニーと微笑みあう。それから、私はバックビークに近づく。
『バックビーク、お別れね。でも、また会えるわ、きっと。シリウスのことよろしくね』
バックビークは頼もしく一鳴きした。
『じゃあ、ハーマイオニー行くわね』
私は、そっとハグリッドの小屋から出る。そして、誰もいないことを確認して呼び掛けた。
『トム』
「何も言わなくていいよ。やることはわかってるから。杖を貸して」
すぐに実体化して現れたトムはそう言う。杖を渡すと、すぐに私に目眩ましの呪文をかけてくれた。
『ありがとう、トム』
私は、そのまま城へと戻っていく。今頃、ハリーは牡鹿のパトローナスで、あんなにもたくさんいたパトローナスを追い払っているだろう。そしてシリウスを助け、シリウスとバックビークは行ってしまうのだ。
『まだ、来ないわ』
アルバスが鍵をかける1分前になっても、ハリーとハーマイオニーは現れない。そしてやっと2人が見えて、私達はジェスチャーだけで合流した。扉が開き、アルバスの背中が見える。
「君たちを閉じ込めておこう。今は...真夜中5分前じゃ。Ms.グレンジャー、Ms.マーレイ、3回引っくり返せば良いじゃろう。幸運を祈る」