第72章 逆転時計
「ルーピン先生がいよいよだわ。変身している...」
ハーマイオニーが囁く。
「ハーマイオニー!ユウミ!行かないと!」
突然呼び掛けたハリー。
「駄目よ。何度も言ってるでしょ...」
「違う。割り込むんじゃない。ルーピン先生が間もなく森に駆け込んで来る。僕たちのいるところに!」
『やだ、忘れてたわ!』
私は顔を青くさせ、ハーマイオニーは息を呑んだ。
「早く!早く!どこへ行ったらいいの?どこに隠れるの?ディメンターがもうすぐやって来るわ」
大急ぎでバックビークの綱を解きながら、ハーマイオニーが呻いた。
「ハグリッドの小屋に戻ろう!今は空っぽだ!行こう!」
「待って、ハリー!ユウミを走らせちゃいけないわ!」
走り出そうとしたハリーは、ハッとしたように立ち止まる。
『大丈夫よ!少しくらいなんてことないわ!』
自分が足を引っ張っている事実に、急いで叫ぶ。
「「駄目!」」
しかし、ハリーとハーマイオニーは声を揃えてそう言った。
「わかった!ユウミ、バックビークの背中に乗るんだ!バックビーク!」
ハリーがバックビークに呼び掛けると、バックビークは私の方に来た。ハリーに手伝ってもらいながら、バックビークの背中に乗せてもらう。そして、前をハリーとハーマイオニーが出来るだけ急いで走り、そのあとを私をのせたバックビークが悠々と走って続く。
背後から、狼人間の遠吠えが聞こえて来た。ハリーは、戸の前で急停止し戸を開けると、ハーマイオニーとバックビークがハリーの前を駆け抜けて、中へと入る。ハリーがそのあとに飛び込み、戸のカンヌキを下ろした。ファングが吼え立てる。
「シーッ、ファング。私たちよ!」
ハーマイオニーが急いで近寄って耳の後ろを撫でて、静かにさせた。
「危なかったわ!」
私はバックビークから降りながら、ハーマイオニーに同意するように頷く。ハリーは窓から外を見ている。バックビークは、またハグリッドの小屋に戻ることができてとても嬉しそうだ。暖炉の前に寝そべり、満足げに翼を畳み、一眠りしそうな気配である。
「ねえ、僕、また外に出たほうがいいと思うんだ。何が起こっているのか、見えないし...いつ行動すべきなのか、これじゃわからない...」
考えながら言ったハリー。ハーマイオニーが顔をあげた。疑っているような表情だ。