第72章 逆転時計
アルバスの声はまだ面白がっているような感じだった。
「は...はい、先生。お入りくだせえ、さあ...」
ハグリッドは、嬉しくて力が抜けたようだ。私達は、じっと聞き耳を立てる。足音が聴こえ、死刑執行人が悪態をつく声が聞こえ、戸がバタンと閉まった。そして、再び静寂が訪れる。
「さあ、どうする?」
ハリーが周囲を見回しながら囁いた。
「ここに隠れていなきゃ。みんなが城に戻るまで待たないといけないわ。それから、バックビークに乗ってシリウスの居る部屋の窓まで飛んで行っても安全だ、ということがわかるまで待つの。シリウスは、あと2時間ぐらいしないとそこには居ないのよ...ああ、とても難しいことだわ」
ハーマイオニーは、とても動揺している様子だ。ハーマイオニーは振り返って、恐わごわと森の奥を見た。太陽がまさに沈もうとしている。
「移動しなくちゃ。暴れ柳が見えるところにいないといけないよ。そうじゃないと、何が起こっているのかわからなくなるし」
ハリーがよく考えてから言った。
「わかったわ。でも、ハリー、忘れないで...私たち、誰にも見られないようにしないといけないのよ...」
バックビークの手綱をしっかりと握りながら言ったハーマイオニー。
『二人とも、私は行かないわね。ここに残るわ』
「わかった、気をつけてね」
ハリーが頷き、2人は進もうとしたが、なんとバックビークが私の近くに来た。
「バックビーク、おいで!」
ハーマイオニーが綱を引っ張ると、嫌そうにして首を振る。ハリーも一緒に歩かせようとするが、どうにも上手くいかない。
『あー、そうね。やっぱり私も行くわ』
その様子を見て、私はそう言った。
「うん、その方がいいみたい。バックビークは、ユウミのことが好きなんだね」
ハリーは私を見て感心したように言う。私が歩き出すと、バックビークもスムーズについてくる。暗闇が段々と色濃く3人を包む中、3人は森の端しに沿って進み、柳が垣間見える木立ちの陰に隠れた。
「ロンが来た!」
突然ハリーが言う。黒い影が、芝生を横切って駆けて来るときの叫び声が、静かな夜の空気を震わせた。
「スキャバーズから離れろ...離れるんだ...スキャバーズこっちへおいで」
それから、どこからともなく現われる2人の姿が見る。ハリーとハーマイオニーだ。