第72章 逆転時計

ロンを追ってきたのだろう。そして、ロンが滑り込む姿が見えた。

「捕まえた！とっとと消えろ、いやな猫め...」

「今度はシリウスだ！」

ハリーがそう言う。柳の根元から、大きな犬の姿が躍り出る。犬がハリーを転がし、ロンを咥えるところを私達は見た。

「ここから見てると、よけいひどく見えるよね？」

ハリーは犬がロンを木の根元に引きずり込むところを眺めながら言った。

『えぇ、とてもひどく見えるわ』

「あ痛ッ...見てよ、僕、いま、木に殴られた...ハーマイオニー、きみも殴られたよ...変な気分だ...」

暴れ柳は軋み、低いほうの枝を鞭のように動かしていた。ハリーとハーマイオニーが、木の幹に辿り着こうとあちこち走り廻っている姿がここから見える。

『結構、大変だったのね』

私は、肩を竦めて感想を言う。そして、木が動かなくなった。

「クルックシャンクスが、あそこで木のコブを押したんだわ」

ハーマイオニーが言った。

「僕たちが入って行くよ...僕たち入ったよ」

呟いたハリー。みんなの姿が消えた途端、柳はまた動き出した。

「見て！次はユウミが来た！」

私は、キョロキョロとしてから暴れ柳に近づく。

「ユウミ、あなた何をしているの？」

『暴れ柳に自己紹介していたの』

怪訝そうなハーマイオニーは、そのあと何事もなく無事に穴に入っていた私を見て驚いていた。二人ともそれに驚いていて、私がみんなが入っていったのを見ていないのに悩むこともせず、穴に入ったのを問い詰められずに済んで安心した。その数秒後、すぐ近くで足音を聴こえる。アルバス、マクネア、ファッジ、それに年老いた委員会のメンバーが城へ戻るところだった。

「ユウミが、地下通路に降りたすぐ後だわ！あのとき、ダンブルドアが一緒に来てくれてさえいたら...」

「そしたら、マクネアもファッジ大臣も一緒について来てたよ。賭けてもいいけど、ファッジ大臣は、シリウスをその場で殺せって、マクネアに指示したと思うよ」

ハーマイオニーの言葉に、ハリーが苦々しげに言う。4人が城の石段を上がって見えなくなるまで、私達は見つめていた。しばらくのあいだ、あたりには誰もいなかった。

「ルーピン先生が来た！」

しばらくして、ハリーがそう言った。もう一人の姿が城の石段を下り、柳に向かって走って来たのだ。