第72章 逆転時計
「時間を逆戻りさせたの。3時間前まで...」
私はそこでハーマイオニーに言う。
『ハーマイオニー。私、先に行くわ』
「...えぇ。ユウミ、気をつけて」
ハーマイオニーは、私に向かって頷いた。そっと気づかれないように、私はそこを出て声をかける。
『トム、いる?』
「いるよ。何をしたらいいんだい?」
トムが実体化して現れた。意図を汲み取ってくれたトムに驚きながらも、私は杖を渡して頼んだ。
『私に、目くらましの呪文をかけてほしいの』
トムは、私の言葉にきょとんとした。
「ユウミ、出来なかったかい?出来ていた気がするけど」
『えぇ、出来るわ。でも不安なの。トムにかけてもらった方が安全だと思って。もし、途中で見えるようになってしまったら大変だもの。お願いしてもいいかしら?』
納得したような、してないような表情のトム。それでもすぐに杖を受け取り、私に呪文をかけてくれた。
『トム、見えない?』
「大丈夫だよ」
答えながら私に杖を差し出してくれたトムから受けとる。
「近くにいるから、何かあったらまた呼ぶんだよ」
私は安心して、微笑む。
『ありがとう、トム』
今頃ハリーは、ハーマイオニーから逆転時計のことを聞かされているのだろう。それでどうやって複数の授業を受けていたのかわかるはずだ。私は、なるべく急いで森に向かう。
途中で、ハリーとハーマイオニーが全速力で駆け抜けていった。私には気づかなかったようだから、ちゃんと透明になっているようだ。私がハリーとハーマイオニーの傍に来たときには、ハーマイオニーの声が聞こえてきた。
「わからないの?私たち、もっとも大切な魔法界の規則を一つ破っているのよ!時間を変えるなんて、誰もやってはいけないことなの。誰も!ダンブルドアの言葉を聞いたわね。もし私たちの行動を誰かに見られたら...」
「僕たち自身と、ハグリッドに見られるだけじゃないか!」
「ハリー。あなた、ハグリッドの小屋に自分自身が飛び込んで来るのを見たら、どうすると思う?」
私は目眩ましの呪文を解除してから、二人に声をかけようと近づく。その間にも二人は、会話を続けていた。
「僕...多分気が狂ったのかなと思う。そうじゃなければ、何か闇の魔術がかかってると思う...」