第71章 私達の秘密
マダム・ポンフリーは、口をきっと結んで、病棟の端しに位置する自分の事務所に向かって大股に歩き出し、後ろを向いたままドアを閉めてしまった。ファッジは、チョッキにぶら下げていた大きな金の懐中時計を見る。
「ディメンターがそろそろ着いた頃だ。迎えに出なければ。ダンブルドア、上の階でお目に掛かろう」
ファッジは、病室の外でセブルスのためにドアを開けて待つ。しかし、セブルスは動かない。
「ブラックの話など、一言も信じてはおられないでしょうな?」
「わしは、ハリーとハーマイオニーと3人だけで話したいのじゃ」
セブルスはアルバスを見据えたまま囁くように言ったが、アルバスは同じ言葉を繰り返した。
「シリウス・ブラックは16歳のときに、すでに人殺しの能力を顕わした。お忘れになってはいますまいな、校長?ブラックは、かつて我輩を殺そうとしたことを、忘れてはいますまい?」
セブルスはアルバスの方に1歩踏み出して、息をひそめて言った。
「セブルス。わしの記憶力は、まだ衰えてはおらんよ」
静かに言ったアルバス。セブルスは身体の向きを変えて、ファッジが開けて待っていたドアから肩を怒らせて出て行った。ドアが閉まると、アルバスはハリーとハーマイオニーのほうを向く。2人が同時に、堰を切ったように話し出した。
「先生、ブラックの言っていることは本当です...僕たち、本当にペティグリューを見たんです」
「...ペテイグリューは、ルーピン先生が狼人間に変身したとき逃げたんです...」
「...ペティグリューは、ネズミです...」
私はどうするかを決めたため、体をベッドからおこす。
「...ペティグリューの前足の鉤爪、じゃなかった、指、それ、自分で切ったんです...」
「...ペティグリューがロンを襲ったんです。シリウスじゃありません...」
アルバスは手を上げて洪水のような説明を制止した。
「今度は、君たちが聞く番じゃ。頼むから、わしの言うことを途中で遮らんでくれ。なにしろ時間が無いのじゃ。その前に、ユウミもおいで」
アルバスは静かな口調で言った。私は自分の名前が呼ばれたことに驚きながらも、ベッドから降りてハリーとハーマイオニー、そしてアルバスの近くにいく。
「よし。では3人とも、わしの言うことを途中で遮らずに、聞くのじゃ」
私はアルバスに向かって頷いた。