第70章 ヴォルデモート卿の召使い
ペティグリューは膝を折ったまま向きを変え、前のめりになりながらハーマイオニーのローブの裾を掴んだ。
「やさしいお嬢さん...賢いお嬢さん...あなたは...あなたなら、そんなことをさせないでしょう...助けて...」
ルーピン先生が助ける前に、ハーマイオニーはローブを引っ張り、しがみつくペティグリューの手をもぎ取り、怯えきった顔で壁際まで下がった。ペティグリューは止めどなく震えながら膝まずき、ハリーに向かってゆっくりと顔を上げる。
「ハリー...ハリー...君はお父さんに生き写しだ...そっくりだ...」
「ハリーに話し掛けるとは、どういう神経だ?ハリーに顔向けができるか?この子の前で、ジェームズのことを話すなんて、どの面下げて出来るんだ?」
シリウスが大声を出した。ペティグリューは両手を伸ばし、ハリーに向かって膝で歩きながら囁く。
「ハリー、ジェームズなら私が殺されることを望まなかっただろう...ジェームズならわかってくれたよ、ハリー...ジェームズなら私に情けをかけてくれただろう...」
シリウスとルーピン先生が、大股にペティグリューに近付き、肩を掴んで床の上に仰向けに叩き付けた。ペティグリューは座り込んで、恐怖で痙撃しながら二人を見つめる。
「おまえは、ジェームズとリリーをヴォルデモートに売った。否定するのか?」
そう言ったシリウスも、身体を震わせていた。ペティグリューは、ワッと泣き出す。
「シリウス、シリウス、私に何が出来たというのだ?闇の帝王は...君にはわかるまい...あの方には、君の想像もつかないような武器がある...私は怖かった。シリウス、私は、君やリーマスやジェームズのように勇敢じゃなかった。私は、やろうと思ってやったんじゃないんだ...あの名前を言ってはいけないあの人が無理やり...」
「嘘をつくな!おまえは、ジェームズとリリーが死ぬ一年も前から、あの人に密通していた!おまえがスパイだった!」
割れるような大声を出したシリウス。
「あの方は...あの方は、あらゆるところを征服していた!あの方を拒んで、な、何が得られたろう?」
ペティグリューが喘ぎながら言う。
「史上もっとも邪悪な魔法使いに抵抗して、何が得られたかって?それは、罪もない人々の命だ、ピーター!」
シリウスの顔には、凄まじい怒りが浮かんでいる。