第70章 ヴォルデモート卿の召使い
ペティグリューはルーピン先生のほうに向き直り、哀れみを請うように身体を捩りながら金切り声を上げた。
「ピーター、私のことをスパイだと思っていたのなら話さなかっただろうな。シリウス、たぶんそれで私に話してくれなかったのだろう?」
ペティグリューの頭越しにルーピン先生がさりげなく言う。
「すまない、リーマス」
「気にするな。わが友、パッドフット。そのかわり、私が君をスパイだと思い違いしたことを許してくれるか?」
シリウスが謝ると、袖を捲り上げながら言ったルーピン先生。
「もちろんだとも。一緒に、こいつを殺すか?」
シリウスの幽霊のようなげっそりした顔に、ふと、微かな笑みが漏れる。シリウスも袖を捲り上げる。
「ああ、そうしよう」
ルーピン先生が厳粛に言った。
「やめてくれ...やめて...」
喘いだペティグリュー。そして、ロンの傍に転がり込んだ。
「ロン...私はいい友達...良いペットだったろう?私を殺させないでくれ、ロン。お願いだ...君は私の味方だろう?」
しかし、ロンは思いっきり不快そうにペティグリューを睨む。
「自分のベッドに、おまえを寝かせてたなんて!」
「やさしい子だ...情け深いご主人様...殺させないでおくれ...私は君のネズミだった...良いペットだった」
ペティグリューはロンの方に這いよる。
「人間のときより、ネズミのほうがさまになるなんていうのは、ピーター、あまり自慢にはならない」
シリウスが厳しく言った。ロンは痛みで一層青白くなりながら、折れた脚をペティグリューの手の届かないところへと捻る。ペティグリューをみていると、なんと目が合う。
「...お嬢さん...君はルイスの娘だろう...優しかった...ルイスなら私を助けてくれる...助けてくれ...」
ペティグリューがまさかすがりついてくるとは思わず固まっていると、ルーピン先生がやってくる。
「ユウミは私の大切な生徒であり、お世話になったルイスの娘だ。離れるんだ」
ルーピン先生が引き剥がしてくれる。ペティグリューがお父さまの名前を出した途端にシリウスの視線がこちらを向いたのを感じた。
「大丈夫かい?」
『はい、ありがとうございます』
私がルーピン先生にお礼を言っている間に、ペティグリューはハーマイオニーの方に行く。