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愛される少女【HP】

第70章 ヴォルデモート卿の召使い


シリウスは、自分が正気を失わなかった理由は唯ひとつ、自分が無実だと知っていたからだと言った。これは幸福な気持ちではなかったから、ディメンターは吸いとれなかったと。しかし、その思いが自分に力を与えてくれたと。

そして、いよいよ耐え難くなったときは独房で犬に変身することができたと。ディメンターには視力がなく、シリウスの感情が複雑でなくなるのを感じても、他の囚人と同じく正気を失ったのだと気にも止めなかったと。

「私は、弱っていた。とても。だから杖なしで連中を追い払うことは出来ないと諦めていた。そんなとき、私はあの写真でピーターを見付けた...ホグワーツで、ハリーと一緒だということがわかった。闇の陣営が再びカを得たとの知らせが入ったら、行動が起こせる完壁な態勢となっているのだということを...」

ペティグリューは、声もなく口をパクつかせながら、首を振っていたが、まるで催眠術にかかったかのように、シリウスを見つめ続ける。シリウスは、ペティグリューが加担する力に確信が持って、ハリーを差し出す前になんとかしなければと思ったらしい。

ペティグリューが生きているのを知っているのは自分だけだからと。その気持ちがシリウスに力を与え、心がしっかり覚醒したらしい。そこである晩、連中が食べ物を運んで来て独房の扉を開けたとき、シリウスは連中の脇をすり抜けてから犬になったのだ。それから、犬の姿で泳ぎ、北へと旅、ホグワーツの校庭に犬の姿で入り込んだと言った。

「信じてくれ。信じてくれ、ハリー。私は決してジェームズやリリーを裏切ったことはない。裏切るくらいなら、私が死ぬほうがましだ」

かすれた声で言ったシリウス。ハリーは、ようやく信じたのか頷いた。

「駄目だ!」

ペティグリューは、ハリーが頷いたことが自分の死刑の宣告でもあるかのようにガックリと膝をつく。そのままにじり出て、祈るように手を握り合わせ、這いつくばった。

「シリウス...私だ...ピーターだ...君の友達の...まさか君は...」

シリウスが蹴飛ばそうと足を動かすと、ペティグリューは後ずさる。

「私のローブは充分に汚れてしまった。この上おまえの手で汚されたくはない」

「リーマス!君は、信じないだろうね...さっき言ったようなことを計画していたのなら、シリウスは君に話したはずだろう?」

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