第69章 ムーニー、ワームテール、パッドフット、プロングズ
「私は、不吉な予感がして、すぐ君のご両親の所へ向かった。そして、家が壊され、2人が死んでいるのを見たとき...私は悟った。ピーターが何をしたのかを。私が、何をしてしまったのかを」
涙声になり、シリウスは顔を背けた。
「話は、もう充分だ。本当は何が起こったのか、証明する道はたった一つだ。ロン、そのネズミを寄越しなさい」
ルーピン先生の声には、これまで聞いたことがないような、情け容赦のない響きがあった。
「こいつを渡したら、何をしようというんだ?」
ロンが緊張した声でルーピン先生に尋ねる。
「無理にでも正体を顕わさせる」
ルーピン先生が答えた。ロンは、それを聞いて守るように強くスキャバーズを胸に抱く。
『ロン、もし本当のネズミなら傷つくようなことはしないはずよ』
「ユウミの言うとおりだよ。もし、本当のネズミだったら、これで傷付くことはない」
ロンはためらったようだが、とうとうスキャバーズを差し出し、ルーピン先生が受け取った。スキャバーズは、キーキーと喚き続け、身体を捻り、もがきながら、小さな黒い目が飛び出しそうになっている。
「シリウス、準備は?」
ルーピン先生が言った。シリウスはもう、セブルスの杖を手に持っていた。シリウスが、ルーピン先生とジタバタしているネズミに近付く。涙で潤んだ目が、突然燃え上がったかのようだ。
「一緒にやるか?」
低い声で言ったシリウス。ルーピン先生は、スキャバーズを片手にしっかり掴み、もう一方の手で杖を握った。
「そうしよう。3つ数えたらだ。いち...に...さん!」
青白い光りが2本の杖から噴出する。一瞬、スキャバーズは宙に浮き、そこに静止した。小さな黒い姿が激しく揺れる。...ロンが、叫び声を上げた...ネズミは床にボトリと落ちた。
もう一度、目も眩むような閃光が走り、そして...木が育つのを早送りで見ているかのような感じだった。頭が床から上に伸び、手足が生え、次の瞬間スキャバーズが居た所に、1人の男の人が、手をよじり、あとずさりしながら立っていた。
クルックシャンクスが、ベッドの上で背中の毛を逆立て、シャーッ、シャーッと激しい音を出して唸る。小柄な男の人だ。ハリーやハーマイオニーの背丈とあまり変わらないように見える。まばらな色あせた髪の毛はクシャクシャで、天辺に大きな禿げがあった。