第69章 ムーニー、ワームテール、パッドフット、プロングズ
「ピーターを、私の所に連れて来ようとしたのだ。しかし、出来なかった...そこで、私のためにグリフィンドール塔への合言葉を盗み出してくれた...誰か男の子のベッド脇の小机から持って来たらしい...」
その男の子は、ネビルだ。シリウスは話続ける。
「しかし、ピーターは事の成り行きを察知して、逃げ出した...この猫は...クルックシャンクスという名前だね?...ピーターが、ベッドのシーツに血の痕を残していったと教えてくれた...多分自分で自分を噛んだのだろう...そう、死んだと見せかけるのは、前にも一度うまくやったことがある...」
ハリーはハッと我れに返ったように、激しい語気で言った。
「それじゃ、なぜピーターは自分が死んだと見せ掛けたんだ?あなたが、僕の両親を殺したと同じように、ピーター自身をも殺そうとしていると気付いたからじゃないか!」
「違う、ハリー...」
口を挟んだルーピン先生。
「それで、今度は止めを刺そうとしてやって来たんだろう!」
「その通りだ」
シリウスは殺気立った目でスキャバーズを見る。
「それなら、僕はスネイプ先生にあなたを引き渡すべきだったんだ!」
ハリーが叫ぶ。
「ハリー。わからないのか?私たちは、ずっと、シリウスが君のご両親を裏切ったと思っていた。ピーターが、シリウスを追い詰めたと思っていた...しかし、それは逆だった。わからないかい?ピーターが君のお父さん、お母さんを裏切ったんだ...シリウスがピーターを追い詰めたんだ」
ルーピン先生が急き込んで言った。しかし、ハリーは信じない。
「嘘だ!ブラックが、秘密の守人だった!ブラック自身が、あなたが来る前にそう言ったんだ。この人は、自分が僕の両親を殺したと言ったんだ!」
ハリーは、シリウスを指差す。シリウスはゆっくりと首を振る。落ち窪んだ目が急に潤んだように光った。
「ハリー...私が殺したも同然だ。最後の最後になって、ジェームズとリリーに、ピーターを守人にするように勧めたのは私だ。ピーターに変更するように勧めた。私が悪いのだ。確かに...2人が死んだ夜、私はピーターの所に行く手筈になっていた。ピーターが無事かどうか、確かめに行くことにしていた。ところが、ピーターの隠れ家に行ってみると、もぬけの殻だった。しかも、争った跡はなかった。どうもおかしい」