第69章 ムーニー、ワームテール、パッドフット、プロングズ
「それに、写真の説明には、この子がホグワーツへと戻ると書いてあった...ハリーのいるホグワーツヘと...」
シリウスが答える。
「そういうことか。こいつの前足だ...」
ルーピン先生がスキャバーズから新聞の写真へと目を移し、またスキャバーズのほうをじっと見つめながら静かに言った。
「それが、どうしたって言うんだい?」
喰ってかかるロン。
「指が一本ない」
シリウスが答える。
「まさに。なんと、単純明快なことだ...なんと、こざかしい...こいつは、自分で切ったのか?」
ルーピン先生は、ため息をついた。
「変身する直前にな。こいつを追い詰めたとき、こいつは道行く人全員に聞こえるように叫んだ。この私がジェームズとリリーを裏切ったんだと。それから、私がやつに術をかけるより先に、やつは隠し持った杖で道路を吹き飛ばし、自分の周囲二十フィート以内に居た人間を皆殺しにした...そして、素早くネズミがたくさんいる下水道に逃げ込んだ」
答えるシリウス。
「ロン、聞いたことはないかい?ピーターの残骸で、一番大きなものが指だったって」
ルーピン先生が言う。
「だって、多分、スキャバーズは他のネズミと喧嘩したかなんかだよ!こいつは、何年も家族の中でお下がりだった。たしか...」
「12年だね、確か。どうして、そんなに長生きなのか、変だと思ったことはないのかい?」
「僕たち...僕たちが、ちゃんと世話してたんだ!」
ロンが答えた。
「今は、あんまり元気じゃないようだね。どうだね?私の想像だが、シリウスが脱獄してまた自由の身になったと聞いて以来、やせ衰えてきたのだろう」
「こいつは、その狂った猫が怖いんだ!」
ロンは、ベッドでゴロゴロ喉を鳴らしているクルックシャンクスを顎で差し示した。
「この猫は狂ってはいない。私の出会った猫の中で、こんなに賢い猫はまたといない。ピーターを見るなり、すぐ正体を見抜いた。私に出会ったときも、私が犬でないことを見破った。私を信用するまでに、しばらくかかったが、ようやく、私の狙いをこの猫に伝えることが出来て、それ以来私を助けてくれた」
シリウスは骨と皮ばかりになった手を伸ばし、クルックシャンクスのフワフワした頭を撫でながら、かすれ声で言った。
「それ、どういうこと?」
息をひそめて言ったハーマイオニー。