第69章 ムーニー、ワームテール、パッドフット、プロングズ
「その話を、みんなに聞かせるつもりなら、リーマス、さっさと済ませてくれ。私は12年も待った。もう、そう長くは待てない」
必死にもがくスキャバーズの動きを、じっと監視し続けながら、ブラックが唸った。
「わかった...だが、シリウス、君にも助けて貰わないと。私は、そもそものはじまりのことしか知らない...」
ルーピン先生の言葉が途切れる。背後で大きく軋む音がしたのだ。ベッドルームのドアが、開いた。6人がいっせいにドアを見つめた。そして、ルーピン先生が足早やにドアのほうに進んで行って、階段の踊り場のほうを見る。
「誰もいない...」
私は、来てしまったのねと思う。
「ここは、呪われてるんだ!」
そう言ったロン。
「そうではない。叫びの屋敷は、決して呪われてはいなかった...村人が、かつて聞いたという叫びや吼え声は、私の出した声だ」
不審そうにドアに目を向けたままで、ルーピン先生が言った。ルーピン先生は、目にかかる白髪の混じりはじめた髪の毛を掻き上げ、一瞬思いに耽り、それから話し出す。
「話は、すべてそこからはじまる...私が人狼になったことから。私が噛まれたりしなければ、こんなことはいっさい起こらなかっただろう...そして、私にもう少し思慮が備わっていたら...」
ルーピン先生は疲れた様子だったが、真面目に話した。ロンが口を挟もうとしたが、ハーマイオニーが'シーッ!'と言う。ハーマイオニーは、真剣にルーピン先生を見つめる。
「噛まれたのは、私がまだ小さい頃だった。両親は手を尽くしたが、あの頃は治療法が無かった。スネイプ先生が、私に調合してくれている魔法薬は、ごく最近発明されたばかりのものだ。あの薬で、私は無害になれる、わかるね。満月の夜の前の一週間、あれを飲みさえすれば、変身しても自分の心を保つことができる...自分の私室で丸まっているだけの、無害な狼で居られる。そして、再び月が欠けはじめるのを待つ」
私は、悲しくなり目を閉じた。
「トリカブト系の'ウルフスベイン(脱狼薬)'が開発されるまでは、私は月に一度、完全に成熟した怪物に成り果てた。ホグワーツに入学するのは、不可能だと思われた。他の子の親にしてみれば、自分の子供を、私のような危険なものにさらしたくないはずだ。しかし、ダンブルドアが校長になり、私に同情してくださった」