第68章 猫、ネズミ、犬
「ロン、最後まで私の話を聞きなさい。ただ聞いているあいだ、ピーターをしっかり捕まえておいてくれ」
「ピーターなんかじゃない。こいつはスキャバーズだ!」
叫びながら、ロンはネズミを胸ポケットに無理やり押し戻そうとした。しかし、スキャバーズは大暴れして逆らう。ロンがよろめき倒れそうになり、ハリーがロンを支え、ベッドに押し戻した。それから、ハリーはシリウスを無視して、ルーピン先生に向かって言う。
「ペテイグリューが死んだのを、見届けた証人が居るんだ。通りに居た人たちが大勢...」
ロンの手の中でジタバタしているスキャバーズから目を離さず、シリウスが荒々しく言った。
「見てはいない。見たと思っただけだ」
「シリウスがピーターを殺したと、誰もがそう思った。私自身も、そう信じていた...今夜、地図を見るまではね。忍びの地図は、決して嘘は付かないから...ピーターは、生きている。ロンが彼を握っているんだよ、ハリー」
ルーピン先生の言葉に、ハリーはロンを見下ろした。チラっと様子を見ると、信じていないみたいだ。ハーマイオニーが、震えながら冷静さを保とうと努力して、ルーピン先生にまともに話して欲しいと願うかのように話し出した。
「でも、ルーピン先生...スキャバーズがペティグリューのはずがありません...そんなこと、あるはずないんです。先生はそのことをご存じのはずです...」
「どうしてかね?」
ルーピン先生の言い方は、まるで授業中にハーマイオニーがグリンディローの実験の問題点を指摘したかのようだった。
「だって...だって、もしピーター・ペティグリューがアニメーガスなら、みんなそのことを知っているはずです。マクゴナガル先生の授業で、アニメーガスの勉強をしました。その宿題で、私、アニメーガスを全部調べたんです...。魔法省が動物に変身できる魔法使いや魔女を記録していて、何に変身するかとか、その特徴などを書いた登録簿があります...私、登録簿で、マクゴナガル先生が載っているのを見つけました。それに、今世紀にはたった7人しかアニメーガスがいないんです。ペティグリューの名前は、リストに載っていませんでした」
ルーピン先生は笑い出した。
「またしても正解だ、ハーマイオニー!でも、魔法省は、未登録のアニメーガスが3匹、ホグワーツを徘徊していたことを知らなかったのだ」