第68章 猫、ネズミ、犬
「どうしてマントのことを?」
「ジェームズが、マントに隠れるところを何度見たことか...要するに、透明マントを着ていても、忍びの地図の上には現われるということだよ。私は、君たちが校庭を横切り、ハグリッドの小屋に入るのを見ていた。20分後、君はハグリッドの所を離れ、城に戻りはじめた。しかし、今度は君たちの他に誰かが一緒だった」
そう言ったルーピン先生は、また先を急ぐかのように手を振った。
「え?いや、僕たちだけだった!」
「私は、目を疑ったよ。地図がおかしくなったのかと思った。あいつが、どうして君たちと一緒だったのか?」
ルーピン先生は、ハリーの言葉を無視して、往ったり来たりを続けている。
「誰も、一緒じゃなかった!」
「そしてさらに、もう一つの点が見えたんだ。急いで君たちに近付いていた。そこには、シリウス・ブラックと書かれていた...シリウスが、君たちと交わるのが見えた。そして、君たちの中から2人を暴れ柳に引きずり込むのを見た...」
「1人だろ!」
怒ったように言ったロン。
「ロン、違うんだ。2人だ」
ルーピン先生は歩くのを止め、ロンを眺め回した。それから、感情を抑えた言い方でロンに言う。
「ネズミを見せてくれないか?」
「なんで?スキャバーズに何の関係があるんだ?」
「あるんだ。頼む。見せてくれないか?」
ロンは躊躇ったが、ローブに手を突っ込んだ。スキャバーズが、必死にもがきながら現われた...逃げようとするスキャバーズを、ロンは剥き出しになった尻尾を捕まえて止める。
クルックシャンクスが、シリウスの膝の上で立ち上がり、低く唸った。ルーピン先生はロンに近づき、じっとスキャバーズを見つめながら、息を殺しているようだった。
「なんだよ?僕のネズミが、いったいなんの関係があるって言うんだ?」
ロンはスキャバーズを抱き締め、脅えながらもう一度同じことを言う。
「それは、ネズミじゃない」
突然シリウスのしわがれ声が言った。
「どういうこと...こいつは、もちろんネズミだよ...」
「いや、ネズミじゃない。そいつは、魔法使いだ」
静かに言ったルーピン先生。
「'アニメーガス'だ。名前は、ピーター・ペティグリュー」
シリウスがそう言った。私は、やっとここまで来たと思った。突拍子もない言葉を呑み込むまでに数秒の時間が掛かる。