第68章 猫、ネズミ、犬
それでも、ルーピン先生のことが好きで尊敬している私からすると、そんなこと言って欲しくなかった。
「先生の中にも、そういう意見があった。ダンブルドアは、私が信用できると、何人かの先生を説得するのに随分ご苦労なさった」
「だけど、ダンブルドアは間違ってたんだ!あなたは、ずっとこいつの手引きをしてたんだ!」
ハリーは、シリウスを指差して叫んだ。シリウスは、天蓋付ベッドのほうに歩いて行って、震える片手で顔を覆いながらベッドに腰掛けた。クルックシャンクスがベッドに飛び上がり、ブラックの傍らに寄り添い、膝に乗って喉を鳴らす。ロンは、その両方から少しずつ離れるように私に近づいてきた。
「私は、シリウスの手引きはしていない。話をさせてもらえるなら、理由を説明する。ほら」
ルーピン先生は、3本の杖を1本ずつ、ハリー、ロン、ハーマイオニーのそれぞれに放り投げ、持ち主に返す。ハリーは、呆気に取られたように自分の杖を受け取った。ルーピン先生は自分の杖をベルトに挟み込む。
「それじゃ、君たちは武器を持っている。私たちはそれを使わない。聞いてくれるかい?」
『ハリー、お願い。聞きましょう?』
悩んでいた様子のハリーは私に向かって軽く頷いてから、シリウスのほうに激しい怒りの眼差しを向けながらいった。
「ブラックの手助けをしていなかったって言うなら、こいつがここに居るって、どうしてわかったんだ?」
「地図だよ。忍びの地図だ。私の部屋で地図を調べていたんだ!」
ルーピン先生が答える。
「使い方を知ってるの?」
疑わしげに聞いたハリー。
「もちろん、使い方は知っているよ。私も、これを書いた一人だ。私はムーニーだよ...学生時代、友人は私をそういう名前で呼んでいた」
ルーピン先生は、先を急ぐように手を振った。
「あなたが、書いた...?」
「そんなことより私は今日の夕方、地図をしっかり見張っていたんだ。というのも、君と、口ン、ハーマイオニー、ユウミが城をこっそり抜け出して、ヒッポグリフの処刑の前に、ハグリッドを訪ねるのではないかと思ったからだ。思った通りだった。そうだね?」
ルーピン先生は、私達を見ながら、部屋の中を往ったり来たりしはじめる。その足元で、挨が少しずつまとまって舞い上がった。
「君は、お父さんの透明マントを着ていたかもしれないね、ハリー」