第68章 猫、ネズミ、犬
ハリーの質問が途切れる。ルーピン先生が、構えた杖を下ろしたからだ。次の瞬間、ルーピン先生は横たわったままのシリウスのほうに歩み寄って、手を取って助け起こした。...シリウスの上にいたクルックシャンクスを床に降ろす。そして、兄弟のようにシリウスを抱き締めた。
「なんてことなの!」
ルーピン先生はブラックを離し、ハーマイオニーのほうを見る。ハーマイオニーは床から腰を上げ、目を怒りに輝かせ、ルーピン先生を指差した。
「先生は...先生は...」
「ハーマイオニー...!」
「...その人と、仲間なんだわ!」
「ハーマイオニー、落ち着きなさい...!」
私は、拳をぎゅっと握りしめる。どうしたらいいのかわからないのだ。前世の記憶を知られずに、おさめる方法が。
「私、誰にも言わなかったのに!先生のために、私、隠していたのに!」
ハーマイオニーが叫ぶ。
「ハーマイオニー、話を聞いてくれ。頼むから!説明するから!」
ルーピン先生も叫ぶ。
「僕は、先生を信じてた。それなのに、先生はずっとブラックの友達だったんだ!」
ハリーが声を震わせ、ルーピン先生に向かって叫んだ。
「それは違う。この12年間、私はシリウスの友ではなかった。しかし、今はそうだ...説明させてくれ...」
「駄目よ!ハリー、騙されないで。この人は、ブラックが城に入る手引きをしてたのよ。この人も、あなたの死を願ってるんだわ...この人...狼人間なのよ!」
沈黙が流れた。全ての目が、ルーピン先生に集まる。ルーピン先生は、青ざめてはいたが、驚くほど落ち着いていた。
「いつもの君らしくないね、ハーマイオニー。残念ながら。3つの問題中、1問しか合ってない。私はシリウスが城に入る手引きはしていないし、もちろんハリーの死を願ってなんかいない...」
ルーピン先生の顔に、奇妙な震えが走った。
「しかし、私が狼人間であることは否定しない」
ロンは雄々しくも立とうとしたが、痛みのために小さく呻き声を上げてまた座り込んだ。ルーピン先生が、心配そうにロンのほうに行き掛けたので、ロンが喘ぎながら言った。
「僕に近寄るな、狼男め!」
そこで私は我慢しきれずに叫んだ。
『やめて!ルーピン先生にそんな言い方しないで!』
みんなの視線がこちらを向いたのを感じた。私は、拳をもっと、強く握りしめる。