第67章 バックビークの運命
「いったい、どうしたんだ?このバカネズミめ。じっとしてろ...ア痛ッ!こいつ噛みやがった!」
「ロン、静かにして!ファッジが今にもここにやって来るわ!」
ハーマイオニーが緊迫した声で囁く。
「こいつめ...なんで、じっと...してないんだ...まったく、こいつ、いったいどうしたんだろう?」
スキャバーズは、ありったけの力で身体を捩り、握り締めているロンの手からなんとか逃れようとしている。しかしまさにそのとき、私は見た。地を這うように身体を伏せてこちらに向かって忍び寄るものを。暗闇に無気味に光る大きな黄色い目のクルックシャンクスだ。私達の姿が見えるのか、それともスキャバーズのキーキー声を追って来るのかはわからない。
「クルックシャンクス!ダメッ。クルックシャンクス、あっちに行きなさい!行きなさいったら!」
ハーマイオニーが呻いた。しかし、クルックシャンクスは段々と近付いて来る。
「スキャバーズ...ダメだ!」
スキャバーズは、しっかり握ったロンの指のあいだをすり抜け地面に落ちて、一目散に逃げ出したのだ。クルックシャンクスが、ひとっ跳びしてそのあとを追い掛ける。ハリーとハーマイオニーが止める間もなく、ロンも透明マントをかなぐり捨てるように、猛スピードで暗闇の中に追い掛けて行ってしまった。
「ロン!」
ハーマイオニーが呻く。二人は顔を見合わせてから、大急ぎで追いかけていく。私は、黙ったままそれを見送る。二人はマントを脱ぎ去り、後ろに旗のようになびかせながら、ロンを追って疾走していった。
『大丈夫。叫びの屋敷に行こう』
私は一人言を呟いて、早歩きで暴れ柳の方に向かう。暴れ柳の近くについた私は、誰もいないのを見てから暴れ柳に近づく。
『はじめまして、暴れ柳さん。私は、ユウミ・マーレイ。あなたの根元の隙間のところを通りたいの』
暴れ柳はさわさわとしてから、1つの枝が私を誘導するように現れ、私は無事に根元についた。
『ありがとう』
頭から先に這うようにして進み、狭い土のトンネルの傾斜を、底まで滑り降りて行く。杖で明かりを出して、ほとんど身体を二つ折りにした状態で先を急いで進む。通路は、延々と続いていた。早歩きで進んでいると、トンネルがそこから上り坂になった。やがて道が捩じ曲がり、小さな穴から漏れるぼんやりした明かりが見えた。