第66章 トレローニー先生の予言
しかし、正面玄関の石段の上に居る人物を目にしたので、口喧嘩にならずに済んだ。コーネリウス・ファッジ魔法省大臣が、細縞のマントを着て汗を掻いた状態で、校庭を見つめていた。ハリーの姿を見付けると、ファッジはハリーを見つめた。
「やあ、ハリー!試験を受けて来たのかね?もう少しで試験も全部終わりかな?」
「はい」
ハリーが答える。私とハーマイオニーとロンは、魔法省大臣と親しく話すような仲ではなかったので、後ろのほうでなんとなくウロウロしていた。
「いい天気だ。かわいそうに...かわいそうに」
ファッジは、湖のほうを見た。それから深いため息をつくと、ハリーを見下ろす。
「ハリー、あまり嬉しくないお役目で来たんだがね。危険生物処理委員会が、私に狂暴なヒッポグリフの処刑に立ち会って欲しいと言うんだ。ブラック事件の状況を調べるために、ホグワーツに来る必要もあったので、ついでに立ち会ってくれというわけだ」
「もう、控訴裁判は終わったということですか?」
思わずなのか、ロンが進み出て口を挟んだ。
「いや、いや。今日の午後の予定だがね」
そう言ったファッジは、興味深げにロンを見た。
「それだったら、処刑に立ち会う必要なんか全然なくなるかもしれないじゃないですか!ヒッポグリフは、自由になるかもしれない!」
ロンが言い張った。ファッジが答える前に、その背後の扉を開けて、城の中から2人の魔法使いが現われる。一人はよぼよぼで、見ている目の前で萎び果てていくような年寄り。
もう一人は、真っ黒な細い口ヒゲを生やした、ガッチリとした大柄の魔法使い。危険生物処理委員会の委員たちなのだろう。老人が目をしょぼつかせてハグリッドの小屋のほうを見ながら、か細い声でこう言ったからだ。
「やれ、やれ、わしゃ、年じゃで、こんなことはもう...ファッジ、二時じゃったかな?」
黒ヒゲの男は、ベルトに挟んだ何かを指でいじっていた。よく見てみると、太い親指で輝く斧の刃を撫で上げていたのだ。ロンが口を開いて何か言い掛けたが、ハーマイオニーがロンの脇腹を小突いて、玄関ホールのほうへと顎で促した。
「なんで止めたんだ?あいつら、見たか?斧まで用意してきてるんだぜ。どこが公正裁判だって言うんだ!」
昼食を食べるために大広間に入りながら、ロンが怒って尋ねる。私は言われずとも理由は、わかった。