第66章 トレローニー先生の予言
クィディッチ杯をついに勝ち取ったという夢見心地は、少なくとも一週間は続いた。天気さえも、祝ってくれているかのようだった。6月が近付き、空は雲一つ無く、蒸し暑い日が続いた。
「私、外に行きたいわ」
「ダメよ!」
ポツリと呟いたミアにクレアがそう言う。ミアだけでなく、誰もが何もする気になれず、ただ校庭をぶらぶらしては芝生に腰を下ろし、冷たいかぼちゃジュースをたっぷり飲むとか、ゴブストーン・ゲームに他愛なく興じるなどとかして過ごしていたいと思っていただろう。
ところがそうはいかない。試験が迫っていたのだ。戸外で息抜きするどころか、みんな無理やり城の中に留まって、窓から漂って来る魅惑的な夏の匂いを嗅ぎながら、脳みそに気合を入れて集中させなければならなかった。フレッドとジョージでさえ、勉強している姿を見掛けることがあった。
二人とも、'O・W・L(標準魔法レベル)試験'を控えていたのだ。セドリックも受ける試験だ。パーシーは、'N・E・W・T(最悪の事態をも網羅する魔法テスト)'という、ホグワーツ校が授与する最高の資格テストを受ける準備をしていた。パーシーは、魔法省に就職希望だったので、最高の成績を取る必要があるのだ。
「ちょっと君たち、うるさいぞ!静かにするんだ!」
パーシーは日増しにとげとげしくなり、談話室の夜の静寂を乱す者があれば、誰であれ厳しい罰を与えていた。今も、犠牲者が。そんな中で、ただ一人、ハーマイオニーだけが、パーシーより気が立っているようだった。近ごろ、ハーマイオニーは邪魔されると、すぐ爆発するのだ。私は、勉強の息抜きをしようと談話室へと降りていく。
「あ!ユウミ、いいところに!」
『どうしたの?』
ハリーに声をかけられ、近づきながら問いかける。そこには、ハーマイオニーとロンもいた。
「ハグリッドからメモが届いたんだ。バックビークの控訴裁判が6日に決まったんだよ」
『試験が終わる日ね』
「みんなが、裁判のためにここにやって来るらしい。魔法省からの誰かと...死刑執行人が」
ハリーが手紙を読みながら言った。ハーマイオニーが驚いて顔をあげる。私も顔をしかめた。
「控訴に、死刑執行人を連れて来るんですって!それじゃ、まるで判決が決まってるみたいじゃない!」
「ああ、そうだね」
そう言ったハリーは、考え込んでいる様子だ。