第65章 クィディッチ優勝戦
試合前夜、グリフィンドールの談話室では、いつもの活動がいっさい放棄された。ハーマイオニーでさえ本を手放してたのだ。
「勉強なんて出来ないわ。とても集中できない」
そう言ったハーマイオニーは過敏になっていた。やたら騒がしかったのだ。プレッシャーを撥ね除けるため、いつもよりやかましく、元気良く振舞っているフレッドとジョージ。
オリバーは、隅のほうでクィディッチ競技場の模型の上に屈み込んで、杖で選手の人形を突っ付きながら、一人でブツブツ言っていた。アンジェリーナ、アリシア、ケイティの3人は、フレッドとジョージが飛ばす冗談で笑っている。私は、ハリーとロンとハーマイオニーと一緒に、騒ぎの中心から離れたところで座っていた。
「絶対、大丈夫よ」
ハーマイオニーはそう言ったものの、怖くてたまらない様子だ。
「ファイアボルトがあるじゃないか!」
ロンが言う。急に立ち上がったオリバーは、一声叫んだ。
「選手!寝ろ!」
試合の当日になって、朝食を食べるために大広間にいた私とクレア達。ハリーが他のグリフィンドール・チームの選手と一緒に大広間に入ってくると、割れるような拍手がハリー達を迎えた。レイブンクローとハッフルパフのテーブルからも拍手が上がっている。
スリザリンのテーブルからは、選手が通り過ぎるとき、嫌味な野次が飛んだ。オリバーは、朝食のあいだずっと、選手に'食え、食え'と勧めていたが、自分は何も口にしていなかった。私は、今しかないと思って立ち上がってハリーに近づく。
『ハリー』
ハリーは私の呼び掛けに気づくと、微笑んで立ってこちらに近づいてくれた。
「やぁ、ユウミ」
『頑張ってね。でも、怪我しないように気をつけて』
今回の試合は特に何もなかったと記憶しているが、荒い試合だった記憶があるため、そう言う。
「うん、ありがとう。頑張るよ」
微笑みかけてくれたハリーに、ぎゅっとハグをする。少しして離れた私が見たのは、少し頬を赤くするハリーだった。突然だったため驚いたのだろうか。
「「ユウミ!!」」
ハリーの後ろからフレッドとジョージがずんずんとこちらにくる。
『フレッド、ジョージも頑張って』
にっこり笑うと、フレッドとジョージは顔を見合わせてからフレッドが手を広げた。意図を察した私はフレッドに抱きつき、続いてジョージにも抱きつく。