第9章 喧嘩とそのあと
寝ようと思ったが、気になってしまいどうしても寝付けなかった。ミアとエイミーは険悪だったし、私もクレアとエイミーと話せないのは寂しい。だからどうしたらいいのかと考えていた。
そこで私は思い当たったのだ。ミアはあのマグル生まれのことを指す侮辱の言葉を使わなかった。あの場面では純血主義の人だと言いそうなものだ。小さい頃から純血主義が染み付いているドラコに置き換えて想像すると、言いそうだなと思った。ドラコには申し訳ないが。そんなことをぐるぐる考えているうちに、いつの間にか眠ってしまっていた。
次の日目を覚まし、カーテンをそっと開けるとミアのベッドだけ空いていた。どこに行ったのかと思った私は支度をし、ミアを探しに行く。しばらく探していると外で一人言を溢しているミアを見つけた。悪いとは思ったが耳を澄ませる。
「はぁ...パパはどうして純血主義になったのかしら。私にもそう振る舞いなさい、マーレイ家のご令嬢には失礼のないようにしなさいって。マグル生まれの人もマグルも私は好きよ...どうしたらいいの」
その言葉を聞いて、ミアがしたくてしてるわけではなくミアのお父さまに指示されたのだとわかった。それがわかれば十分と、私はそっと出ていくことにした。
『ミア』
静かに声をかけるとびくっとしてから振り向いて慌てて立ち上がった。
「マーレイさん!どうしてここに?」
『悪いとは思ったのだけど、聞いちゃったわ。ごめんなさい。でも、ミア?あなたがマグルの人を好きならそれでいいと思うの。きっとお父さまもわかってくださるわ』
「そんなの...だめだわ!パパに嫌われちゃうわ、そんなの嫌だもの」
興奮したのかいつもの丁寧な言葉使いは取れて、声を張り上げた。しかし、段々俯いてしまった。そんなミアにそっと近寄ると手を握った。
『そんなことないわ。ミアのお父さまもきっとわかってくださるわ。それに私も一緒にお話して説得するわ。だからあなたは無理する必要はないのよ?』
やはり無理をしていたのかミアは涙を流し始めたので、そっと背中に手を伸ばし擦った。しばらくして私から体を離して吹っ切れたように笑って言った。
「ありがとう、マーレイさん。パパに言ってみるわ」
『それがいいわ』
ミアは泣いてしまって恥ずかしいのか少し恥ずかしげだったが、二人で顔を見合わせて笑いあった。