第64章 ハーマイオニーの怒り
トレローニー先生は立ち上がって、紛れもなく怒りを込めて、ハーマイオニーを眺め回した。
「まあ、あなた。こんなことを申し上げるのはなんですけど、あなたがこの教室に最初に現れたときから、はっきりわかっていたことでございますわ。あなたには占い学という高貴な技術に必要なものが備わっておりませんの。まったく、こんなに救いようのない世俗的な心を持った生徒に今だかつてお目にかかったことがありませんわ」
一瞬の沈黙があった。
「結構よ!」
ハーマイオニーは唐突にそう言うと、立ち上がり、未来の霧を晴らすの本をカバンに詰め込みはじめた。
「結構ですとも!やめた!私、出て行くわ!」
再びそう言うと、ハーマイオニーは、カバンを振り回すようにして肩にかけ、危うくロンを椅子から叩き落としそうになった。クラス中が呆気に取られる中を、ハーマイオニーは威勢よく出ロヘと歩き、撥ね上げ戸を足で蹴飛ばして開け、梯子を降りて姿が見えなくなってしまう。
全生徒が落ち着きを取り戻すまで、数分かかった。トレローニー先生は、グリムのことを忘れてしまったようだ。ぶっきらぼうに、ハリーとロンのいる机を離れ、透き通ったショールをしっかり身体に引き寄せながら、かなり息を荒げていた。
「おオォーー!」
突然ラベンダーが声をあげ、みんながびっくりする。しかし、それを気にとめる様子もなくラベンダーはトレローニー先生に話しかけた。
「おオォーーー、トレローニー先生。私、今思い出しました。ハーマイオニーが立ち去るのを、ご覧になりましたね?そうでしょう、先生?'イースターの頃、誰か一人が永久に去るでしょう!'と、先生は、ずいぶん前にそうおっしゃいました!」
トレローニー先生は、ラベンダーに向かって、おだやかに微笑む。
「ええ、そうよ。Ms.グレンジャーが授業を去ることは、私、わかっていましたの。でも、'予兆'を読み違えていれば良いのにと願うこともありますのよ...'内なる眼'が重荷になることもありますわ...」
ラベンダーとパーバティは、深く感じ入った顔付きで、トレローニー先生が自分たちのテーブルに移って来て座れるよう、場所を空けた。私は、隣のエイミーが私の手を握って宥めるようにしてくれていなかったら、ハーマイオニーと同じように教室を出ていっていたかもしれない。