第64章 ハーマイオニーの怒り
トレローニー先生は暖炉の火を背にして座り、あたりをじっと見つめた。
「6月の試験は球に関するものだと、運命が私に知らせましたの。それで私、みなさまに十分練習させて差し上げたくて」
「あーら、まあ'運命が知らせましたの'...どなたさまが、試験をお出しになるのかしら?あの人自身じゃありませんこと!なんて驚くべき予言でしょう!」
ハーマイオニーがフンと鼻を鳴らしてから、声を低くする配慮もせず言い切った。トレローニー先生の顔が暗がりに隠れていたので、聞こえたのかどうかはわからない。ただ、聞こえなかったかのように話を続けた。
「水晶占いは、とても高度な技術ですのよ。球の無限の深奥をはじめて覗き込んだとき、みなさまがはじめから何かを'見る'ことは期待しておりませんわ。まず意識と、外なる眼とをリラックスさせることから練習をはじめましょう。そうすれば'内なる眼'と超意識が顕れましょう。幸運に恵まれれば、みなさまの中の何人かは、この授業が終わるまでには'見える'かもしれませんわ」
夢見るような口調で言ったトレローニー先生。そして、みんなが作業に取り掛かりはじめた。私も、水晶玉をじっと見つめる。
「なんか、見えた〜?」
『いいえ、なにも』
15分が経った頃、エイミーに問いかけられたが首を横に振る。誰かの吹き出す音が聞こえて、みんながいっせいにそちらを向いた。
「まあ、何事ですの!」
それと同時に、トレローニー先生がそう言った。パーバティとラベンダーは、'なんて恥知らずな'という目付きでハリー達を見いる。
「あなたがたは、未来を透視する神秘の震えを乱していますわ!」
トレローニー先生は、3人のテーブルに近寄り、水晶玉を覗き込んだ。
「ここに、何かありますわ!何かが動いている...でも、なにかしら?」
低い声で言ったトレローニー先生。それから、ハリーの顔をじっと見つめてこう言って息を吐いた。
「まあ、あなた...ここに、これまでよりはっきりと...ほら、こっそりとあなたのほうに忍び寄り、だんだん大きく...死神犬のグリ...」
「いい加減にしてよ!また、あのバカバカしいグリムじゃないでしょうね!」
ハーマイオニーが大声を上げた。トレローニー先生は、巨大な目を上げ、ハーマイオニーを見る。パーバティがラベンダーに何事か囁き、2人もハーマイオニーを睨む。