第63章 生首事件
「えぇ。あなたたちも、知っておくべきだと思って...。ハグリッドが敗訴したの。バックビークは処刑されるわ。これを...これを、ハグリッドが送って来たの」
ハーマイオニーは私に頷いてから、ハリーとロンに向けてそう言った。そして、手紙を突き出す。ハリーが、それを受け取る。羊皮紙は湿っぽく、大粒の涙であちこちインクがひどく滲んでいて、とても読み難くなっていた。
'ハーマイオニー、ユウミへ 俺たちが負けた。バックビークは、ホグワーツに連れて帰ることを許された。処刑日は、これから決まる。ビーキーは、ロンドンを楽しんだ。おまえさん達が、俺たちのためにいろいろ助けてくれたことは忘れない。ハグリッドより'
「こんなことって、ないよ。こんなこと、しちゃいけないよ。バックビークは危険じゃないんだ」
そう言ったハリー。
「マルフォイのお父さんが、委員会を脅してこうさせたの。あの父親が、どんな人か知ってるでしょう。委員会は、老いぼれのよぼよぼばっかり。みんな怖気づいたんだわ。そりゃ、控訴はあるわ、必ず。でも、望みは無いと思うの...何も、変わりはしないわ」
ハーマイオニーは、涙を拭く。
「いや、変わるさ。ハーマイオニー、ユウミ、今度は君達だけで全部やらなくてもいい。僕が手伝うよ」
「ああ、ロン!」
力をこめて言ったロンの首に抱きついて、ハーマイオニーはワッと泣き出した。ロンは怯えるようにして、ハーマイオニーの頭を不器用に撫でる。私は、ハリーと顔を見合わせて微笑みあう。しばらくして、ハーマイオニーがやっとロンから離れた。
「ロン、スキャバーズのこと、ほんとに、本当にごめんなさい...」
ハーマイオニーがしゃくり上げながら謝る。
「ああ...ウン...あいつは年寄りだったし。それに、あいつ、ちょっと役立たずだったしな。父さんや母さんが、今度は僕にふくろうを買ってくれるかもしれないじゃないか」
ハーマイオニーが離れてくれて、心からホッとしたような顔で言ったロン。私も、二人が仲直りしてくれてホッと安心した。
私は安堵してロンとハーマイオニーに抱きつき、ロンは慌てハーマイオニーは優しく微笑んだ。それから私は、一度離れてハリーも巻き込んでまたみんなに抱きつく。私達は少しの間、そこでわちゃわちゃとしていたのだった。