第63章 生首事件
「これが、どうやって君のものになったのか、私は知りたくはない。ただ、君がこれを提出しなかったことには、私は大いに驚いている。先日も、生徒の一人がこの城の内部情報を不用意に放っておいたことで、あんなことが起こったばかりじゃないか。だから、ハリー、これは返してあげるわけにはいかないよ」
「スネイプ先生は、どうして僕がこれを製作者から手に入れたと思ったのでしょう?」
「それは...」
ルーピン先生は口ごもる。まさか、自分達が作ったからとは言えないだろう。
「それは、この地図の製作者だったら、君を学校の外へ誘い出したいと思ったかもしれないからだよ。連中にとって、それがとても面白いことだろうからね」
「先生は、この人たちをご存じなんですか?」
感心した様子で尋ねたハリー。
「会ったことがある」
ぶっきらぼうに答えたルーピン先生は、これまでに見せたことがないような真剣な眼差しでハリーを見た。
「ハリー、この次は庇ってあげられないよ。私がいくら説得しても、君が納得して、シリウス・ブラックのことを深刻に受け止めるようにはならないだろう。しかし、ディメンターが近付いたとき君が聞いた声こそ、君にもっと強い影響を与えているはずだと思っていたんだがね。君のご両親は、君を生かすために自らの命を捧げたんだよ、ハリー。それに報いるのに、これではあまりにお粗末じゃないか...たかが、魔法のおもちゃ一袋のために、ご両親の犠牲の賜物を危険に曝すなんて」
ルーピン先生は、立ち去った。ハリーの表情を見る限り、反省している様子で、惨めな気持ちになったようだ。ハリーとロンに続いて黙って私は、ついていく。
「僕が悪いんだ。僕が君に行けって勧めたんだ。ルーピン先生の言う通りだ。馬鹿だったよ。僕たち、こんなこと、すべきじゃなかった...」
ロンが突然言った。私達は、警備トロールが行き来している廊下に辿り着いていた。すると、ハーマイオニーがこちらに向かって歩いて来る。ハーマイオニーが二人の真ん前で足を止めたとき、ロンがぶっきらぼうに言った。
「さぞ、ご満足だろうな?それとも、告げ口しに行ってきたところかい?」
『やめて、ロン。ハーマイオニー、まさか?』
あることを思い出した私は、ハーマイオニーに近づく。ハーマイオニーは、両手で手紙を握り締め、唇をワナワナと震わせている。