第63章 生首事件
「闇の魔術が詰まっている?セブルス、本当にそう思うのかい?私が見るところ、無理に読もうとする者を侮辱するだけの羊皮紙に過ぎないように見えるが。子供だましだが、決して危険じゃないだろう?ハリーは悪戯専門店で手に入れたのだと思うよ」
ルーピン先生は、静かに言った。
「そうかね?悪戯専門店で、こんなものをポッターに売ると、そう言うのか?むしろ、直接に製作者から入手した可能性が高いとは思わないのか?」
セブルスは、この地図にルーピン先生が関わっているとわかっていたのだろうか。
「ワームテールとか、この連中の誰かからという意味かね?ハリー、この中に誰か知っている人はいるかい?」
「いいえ」
ハリーは急いで答える。
「セブルス、聞いただろう?私には、悪戯専門店ゾンコの商品のように見えるがね」
ルーピン先生は、セブルスのほうを見た。合図を待っていたかのように、ロンが研究室に息せき切って飛び込んでくる。セブルスの机の真ん前で立ち止まり、胸を押さえながら、途切れ途切れに喋った。
「それ...僕が...ハリーにあげたんです。ゾンコでずいぶん前に...それを...買いました...」
「ほら!どうやら、これではっきりした!セブルス、これは私が引き取ろう。いいね?」
ルーピン先生は手を叩き、機嫌よく周囲を見回した。それから、地図を丸めてローブにしまいこむ。
「ハリー、ロン、おいで。'バンパイア(吸血鬼)'のレポートについて話があるんだ。あぁ、ユウミもだよ、おいで。セブルス、失礼するよ」
声をかけられた私は、セブルスをチラリと見た。
「行きたまえ」
『失礼します、スネイプ先生』
私は、ルーピン先生の近くにかけよる。私達は黙々と玄関ホールまで歩いて、そこではじめて口を開いた。
「先生、僕...」
ルーピン先生を見たハリー。
「事情を聞こうとは思わない」
ルーピン先生は短く答えた。それから、誰もいない玄関ホールを見回し、声をひそめて言う。
「何年も前に、フィルチ管理人がこの地図を没収したことを、私はたまたま知っているんだ。そう、私はこれが地図だということを知っている」
ハリーとロンの驚いたような顔を前にルーピン先生は話しはじめた。私はそれをそっと見守ることにする。ルーピン先生からの言葉なら、ハリーとロンの心に届くと信じて。