第63章 生首事件
ドラコは深呼吸してから、話し始めた。ドラコの話をまとめると、叫びの屋敷でたった一人でいたロンをからかっていたら、頭の後ろに泥の塊が飛んできて、それからハリーの生首を見たらしい。
それを聞いたセブルスは、とても怖い顔になり、ドラコと一緒に研究室を出ていった。一人研究室に残された私は、溜め息をつく。しばらくしてセブルスは、ハリーを連れて戻ってきた。セブルスは私をチラッと見たがなにも言わなかった。ここにいていいということだろう。
「座りたまえ」
ハリーは私を見て驚いたような顔をしたが、セブルスに従い座る。セブルスは立ったままだ。
「ポッター、Mr.マルフォイがたった今、我輩に奇妙な話をしてくれた。その話によれば、叫びの屋敷まで登って行ったところ、ウィーズリーに出会ったそうだ...一人でいたらしい。マルフォイの言うには、ウィーズリーと立ち話をしていたら、大きな泥の塊りが飛んで来て、頭の後ろに当たったそうだ。そのようなことがどうやって起こり得るか、わかるかね?」
少し驚いた顔をしてみせたハリー。
「僕、わかりません。先生」
セブルスはじっとハリーを見ていたが、またハリーに問いかける。
「マルフォイは、そこで異常な幻を見たと言う。それが何であったのか、ポッター、想像が付くかね?」
「いいえ」
「ポッター、君の首だった。空中に浮かんでいたそうだ」
長い沈黙が、流れた。
「マルフォイは、マダム・ポンフリーの所に行ったほうが良いんじゃないでしょうか。変なものが見えるなんて...」
「ポッター、君の首はホグズミードでいったい何をしていたのだね?君の首は、ホグズミードに行くことを許されてはいない。君の身体のどの部分も、ホグズミードに行く許可を受けてはいないのだ」
セブルスの口調は柔らかだ。
「わかっています。マルフォイは、たぶん幻覚を...」
「マルフォイは、幻覚など見てはいない。君の首がホグズミードにあったなら、身体の他の部分もあったのだ」
セブルスは歯を剥き出し、ハリーの座っている椅子の左右の肘掛けに手を掛けて顔を近付けた。セブルスの顔とハリーの顔がすぐ傍の距離に迫る。
「僕、ずっとグリフィンドール塔にいました。先生に言われた通り...」
「誰か証人がいるかね?」
ハリーは、黙りこんでしまった。セブルスの薄い唇が歪み、恐ろしい笑いが浮かぶ。