第63章 生首事件
「ユウミの言った通りね」
ミアの言葉にクレアとエイミーも頷く。次の日、やはりどこもかしこも警戒が厳しくなっていたのだ。フリットウィック先生は入口のドアというドアに、シリウス・ブラックの大きな写真を貼って、人相を覚え込ませていた。
フィルチは、急に気ぜわしく廊下を駆けずり廻り、小さな隙間からネズミの出入口まで、穴という穴に板を打ち付けていた。カドガン卿はお役ごめんとなり、もともと肖像画が置かれていた8階の寂しい踊り場に戻されてしまった。
そして、太った婦人の肖像画が帰って来たのだ。絵は見事な技術で修復されていたが、婦人はまだ神経を尖らせていて、護衛が強化されることを条件に、やっと職場復帰を承知したのだった。
「カドガン卿じゃなくなったのは嬉しいけど〜トロールも嫌だな〜」
「本当ね。でも、仕方ないわ」
私達によって、事件の説明を受けたエイミー。そのエイミーの言葉に、クレアは肩を竦める。婦人の警備に雇われたのは、無愛想なトロールが数体だったのだ。トロールは組になって廊下を往ったり来たりしてあたりを威嚇し、唸りながら、互いの棍棒の大きさを競っていた。
ロンは、昨夜の出来事でにわかに英雄になった。ハリーではなく、ロンの方に注目が集まることは、ロンにとってはじめての経験だったが、ロンがそれをかなり楽しんでいることは明らかだ。あの夜の出来事で、ロンはまだ随分ショックを受けてはいたが、聞かれれば誰にでも嬉しそうに詳しく語って聞かせていた。
「ネビル、可哀想ね」
「そうだけど〜まぁ、仕方ないよね〜」
クレアの言葉に、エイミーが言う。ネビルは大変不名誉なことになっていたのだ。ミネルバの怒りはすさまじく、今後いっさいホグズミードに行くことを禁じ、罰を与え、ネビルには、合言葉を教えてはならないとみんなに言い渡した。
そのため、哀れなネビルは、毎晩誰かが一緒に入れてくれるまで、談話室の外で待つことになってしまったのだ。そしてそのあいだ、警備トロールが不愉快そうに横目でネビルを見るのだった。しかし、それもこれも、ネビルのお祖母さんが送り届けて来たものに比べれば、まだましなものだ。
シリウス・ブラック侵入の2日後、朝食時に生徒が受け取る郵便物の中に、最悪のものをお祖母さんがネビルに送って寄越した。吼えメールだ。私達は、いつものように朝食を食べに大広間にいた。