第62章 グリフィンドール対レイブンクロー
「ウィーズリー、冗談はおよしなさい。肖像画の通路をどうやって通過できたというんですか?」
「あの人に聞いてください!あの人が見たかどうか、聞いてください...」
そう言ったロンは、カドガン卿の絵の裏側を震える指で差し示した。ロンを疑わしそうな目で睨みながら、ミネルバは肖像画を裏から押して、外に出て行く。談話室にいた全員が、息を殺して耳をそばだてる。
「カドガン卿、今しがた、グリフィンドール塔に男の人を一人通しましたか?」
「通しましたぞ。ご婦人!」
カドガン卿が叫んだ言葉に、談話室の外と中とが、同時に愕然として沈黙した。
「と、通したのですか?あ......合言葉は!」
「持っておりましたぞ!ご婦人、一週間分全部持っておりました。小さな紙切れを読み上げておりました!」
ミネルバの声に誇らしげに答えるカドガン卿。ミネルバは、肖像画の通路から戻り、驚いて声もないみんなの前に立った。血の気の引いた蝋のような顔をしている。
「誰ですか。今週の合言葉を書き出して、その辺に放っておいた、救いようの無いほどの愚か者は誰ですか?」
ミネルバの声は震えていた。咳払い一つ無い静けさを破ったのは、ヒッという小さな悲鳴。ネビルが頭の天辺から、ふわふわのスリッパに包まれた足の爪先まで、ガタガタ震えながら、ソロソロと手を挙げた。その夜、グリフィンドール塔では誰も眠ることができなかった。
いや、エイミーはぐっすりと眠っているようだが。シリウス・ブラックが再び城の中を動き廻っているということがみんなに知れ渡っていて、全員が談話室で、シリウス・ブラック逮捕の知らせを待っていたのだ。全員とは言っても、一部は除くが。ミネルバは明け方に戻って来て、シリウス・ブラックがまたもや逃げ切ったということを告げた。
「私、怖いわ」
ミネルバが部屋へと戻るように言ったため、部屋へと戻ってベッドに腰かけた時、クレアがそう言った。
『大丈夫よ、クレア。おそらく、明日には警戒がきつくなってるはずよ。それでも心配なら、一緒に寝る?』
「もう!からかわないで!」
私が言った言葉にミアがくすくす笑ったため、クレアは拗ねたようにそう言ってカーテンを閉めてしまう。
『クレア、ごめんなさい。でも、本当に心配なら来てちょうだいね』
クレアに声をかけてから、私はミアと挨拶を交わして眠りについた。