第62章 グリフィンドール対レイブンクロー
ジョージが、蛙ミントをばら撒きはじめたとき、アンジェリーナが甲高い声で尋ねた。
「いったいどうやったの?」
フレッドがハリーの耳にこっそりと囁いているのが見えた。たった一人、祝宴に参加していない生徒がいる。ハーマイオニーだ。ハーマイオニーは隅のほうに座って分厚い本を読もうとしている。
本の題名は'英国における、マグルの家庭生活と社会的慣習'である。心配になった私は、クレア達に声をかけてハーマイオニーに近づく。テーブルでは、フレッドとジョージがバタービールの瓶で曲芸をはじめたようだ。
「試合にも来なかったのかい?」
同じくハーマイオニーの傍に行ったハリーが尋ねる。
「もちろん行ったわ。それに、私たちが勝ってとっても嬉しいし、あなたはとても良くやったわ。でも、私、これを月曜までに読まないといけないの」
ハーマイオニーは目を上げもせず、妙に調子の高い声で答えた。
「いいからハーマイオニー、こっちへ来て、何か食べるといいよ」
そう言ったハリーは、ロンのほうを見て何かを考えている様子だ。気を取り直すような良いムードになっているか考えているのだろう。
「無理よ、ハリー。あと422ページも残ってるの!」
今度は少しヒステリー気味に言ったハーマイオニー。
「どっちにしろ...あの人が私に来て欲しくないでしょうから」
ハーマイオニーも、ロンをちらりと見る。そして、ロンがこの瞬間を見計らったように、聞こえよがしに言った。
「スキャバーズが喰われちゃっていなければなあ。ハエ型ファッジが貰えたのに。あいつ、これが好物だった...」
ハーマイオニーは、ワッと泣き出す。ハリーが困った様子でいるうちに、ハーマイオニーは分厚い本を脇に抱え、すすり泣きながら女子寮への階段のほうへと走って行って、姿を消してしまった。
「もう許してあげたら?」
ハリーは静かにロンに言う。
「だめだ。あいつが、謝るっていう態度ならいいよ...でも、ハーマイオニーのことだもの、自分が悪いって絶対認めないだろうよ。あいつったら、スキャバーズがどっか遊びに行っていなくなったみたいな、今だにそういう態度なんだ」
きっぱり言ったロン。黙って見ていた私は、冷静になるように努めロンを見つめる。
「なんだよ、ユウミ」
ロンはそれに気づいたのか、私に向かってぶっきらぼうにそう言う。