第61章 亀裂
私に気づいたしもべ妖精がよってくるなりそう言ったため、私は慌ててとめる。
『あ、待って。お茶は大丈夫よ。今日は、えっと、頼み事をしてもいいかしら?』
「もちろんでございます、お嬢様!なんなりと!」
しもべ妖精にそう言うと、快く頷いてくれる。
『食べ物が欲しいの。一人前で大丈夫よ。そのなかにチキンも入れてくれると嬉しいわ。お願いできるかしら?』
いつの間にか集まった他のしもべ妖精も嬉しそうに喜んでお辞儀をして、急いで食べ物を取りに行ってくれた。待っている間にとお茶を勧められたが、急いでいたため申し訳ないが断る。そして、持ってきてくれたしもべ妖精達にお礼を言ってから、また急ぎ足で禁じられた森に向かった。
『お待たせ、クルックシャンクス』
黒い犬のそばで待っていてくれたクルックシャンクスにそう言うと、私は黒い犬に近づく。その黒い犬は起きていたが、クルックシャンクスが説明してくれたのか警戒をする様子は見せない。
『これ、食べて』
しもべ妖精が用意してくれた食べ物をその黒い犬の前におく。黒い犬は鼻をヒクヒクさせてから、食べ物にがっつく。あまりの勢いに驚きながらも、お水も出す。
「ニャー」
しばらく、少し離れたところでしゃがんで見ていたが、クルックシャンクスが鳴いたため首を傾げる。クルックシャンクスは、空を見ていた。
『あら、大変!そろそろ日が暮れちゃうわね。クルックシャンクス、私もう行くわね』
同じく空を見上げた私は、クルックシャンクスに告げて立ち上がる。
『黒犬さん、お腹が空いたらクルックシャンクスに伝えてね。そしたら、また持ってくるわ』
微笑んで黒い犬に言ってから、私はその場を後にした。黒い犬は、何の反応も見せなかった。おそらく、あの黒い犬はシリウスだろう。
突然会ってしまったため、すごく驚いた。でも、シリウスが死んでしまっては困るので食べ物をあげられて良かったと思う。私は、そのまま寮へと帰ったのだった。